2024.10.8
2008年に公開された映画『おくりびと』によって、「納棺師」という職業は広く知られるようになりました。主人公が故人を送り出す仕事を通して描かれた感動的なストーリーは、多くの人々の心に残っています。しかし、実際に納棺師とはどのような仕事で、どんな役割を果たしているのでしょうか?今回は、納棺師の仕事内容やその意義、さらに納棺師になる方法について詳しく解説していきます。
『おくりびと』は、滝田洋二郎監督が手掛け、本木雅弘が主演を務めたヒューマンドラマです。 主人公の小林大悟(本木雅弘)は、チェロ奏者として働いていたものの失職し、故郷に戻るなかで偶然納棺師としての仕事に就きます。当初は戸惑いを感じながらも、次第にこの仕事を通して人々の最期を見守ることの大切さに気付き、成長していく姿が描かれます。 遺体を棺に納める納棺師という職業を通じて、生と死、人生の意味を探求する物語は国内外で高く評価され、第81回アカデミー賞をはじめ、第32回日本アカデミー賞でも最優秀作品賞を含む多数の賞を受賞しました。
納棺師は、亡くなった方を棺に納める「納棺の儀」を行う専門職です。 この儀式では、故人の体を清め、旅立ちの準備を整えることが主な役割となります。納棺師の仕事は、ただ故人を棺に収めるだけではありません。故人の身体を丁寧に洗い、清め、死装束や希望の衣装に着替えさせ、死化粧を施して安らかな表情で送り出すという、非常に繊細で感情に寄り添った作業が求められます。
納棺師が行う仕事には、いくつかの重要な儀式や処置があります。ここでは代表的なものを紹介します。
これは、故人の口元を水で潤す儀式で、最初に行われる重要なものです。喪主や近親者が順に、故人の口元に水を湿らせる行為には、故人に対する感謝や祈りが込められています。
湯灌とは、故人の身体を洗い清める行為で、昔から大切にされてきた儀式です。現代では、専用の湯灌車や簡易浴槽を使い、シャワーで故人の身体を丁寧に洗い清めます。
故人の身体を清めた後は、死装束や生前に親しまれた服装に着せ替えをします。故人らしい服装にすることで、ご家族にとっても故人とのお別れが心に残るものとなります。
死化粧は、故人が安らかで美しい姿で旅立てるよう、自然なメイクを施す作業です。髪や顔を整え、故人が生前の姿に近づけられるように配慮しながら行います。家族が一緒に化粧を手伝うこともあります。
これらを通じて、納棺師は故人の旅立ちを見守り、家族に安心感を提供します。
納棺師の仕事は、故人を送り出すための準備を整えるだけではありません。ご遺族にとって大切な人との最期の時間を過ごせる場を作り出すことが求められます。特に、納棺の儀は家族が直接参加することも多いため、納棺師はその場でご家族に暖かく寄り添い、サポートをします。
納棺師になるための必要な資格はありませんが、専門的な知識と技術が必要です。納棺師になるには、主に以下の3つの方法があります。
まずは納棺業を行っている会社に就職し、そこで研修を受けるのが一般的な方法です。現場での実践を通して技術を磨き、葬儀の流れや宗教的なマナーについても学びます。
葬祭業の専門学校で、葬儀全般の知識を学ぶこともできます。この方法では、葬儀業務全般にわたる知識を習得した後、納棺専門の業務に就くことができます。
納棺師を養成する専門的な教育機関として、「おくりびとアカデミー」があります。ここでは、半年間のコースを通じて、納棺の技術や法律的な知識を学ぶことができ、納棺師としての基礎をしっかりと身に付けられます。
映画『おくりびと』で描かれた納棺師の仕事は、人々の人生の最期を温かく見守る繊細かつ重要な役割を担っています。納棺師は、故人を清め、整え、家族とともに大切な旅立ちの儀式を執り行うプロフェッショナルです。この仕事は故人や家族の思いに寄り添うことが大切であるため、繊細な技術と共感力が求められます。死と向き合いながら人々の心に寄り添う、非常にやりがいのある職業です。 納棺師の仕事に魅力を感じる方は、会社や専門の教育機関で学ぶことで納棺師としての道を歩むことができるでしょう。
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