火葬のみの葬儀「直葬」は今後も増える?:全国調査のデータから考察

2024.11.1

    近年、葬儀の形式が大きく変わりつつあります。特に「直葬」と呼ばれる形式は、従来の葬儀とは異なり、通夜や告別式を省き火葬のみを行うシンプルなものです。直葬を選ぶ人が増加している背景には、費用やライフスタイルの変化などさまざまな要因があると考えられます。この記事では、直葬の現状と今後の動向について、全国調査のデータをもとに詳しく解説します。

    直葬とは?

    直葬とは、故人とのお別れを火葬だけで済ませる葬儀の形態を指します。一般的な葬儀では、通夜や告別式といった儀式を行った後、火葬へと進みますが、直葬ではこれらの儀式を省き、火葬のみを執り行います。このため、参列者の数は非常に少なく、故人の家族やごく親しい関係者だけで行われることが多いです。 直葬のメリットとしては、儀式を省くことで葬儀全体の費用を大幅に削減できる点が挙げられます。費用の相場は一般的な葬儀と比較してかなり低く、地域や葬儀社によって異なりますが、概ね20~30万円程度とされています。また、日程調整が簡単で、短期間で火葬まで進めることができるため、忙しい現代人のライフスタイルに合っていると考えられます。

    全国調査でわかった直葬の増加傾向

    直葬がどの程度普及しているのかについて、葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」が実施した「お葬式に関する全国調査」のデータを見てみましょう。この調査は2年に1度、日本全国の40歳以上の喪主経験者に対して行われています。

    調査年直葬や火葬式の割合
    20165.9%
    20184.9%
    20204.9%
    202211.4%
    20249.6%

    直葬や火葬式(宗教儀式のない、火葬のみのお別れ)の割合は、2016年の調査では5.9%、2018年には4.9%と微減していましたが、2020年の調査では同じく4.9%と横ばいの状態でした。しかし、2022年には11.4%とほぼ2倍に増加し、その後の2024年の調査でも9.6%と高い水準を維持しています。

    コロナ禍が直葬の増加に与えた影響

    コロナ禍の影響は、葬儀の選択にも大きな影響を与えました。感染拡大を受けて、密集を避けるために多くの人が集まる従来の葬儀を避け、できるだけシンプルで短期間で済む直葬が選ばれる傾向が強まりました。さらに、感染症対策に伴う経済的な不安から、多くの家族が費用を抑えた葬儀を選択することが増えたことも、直葬の増加に拍車をかけました。 しかし、2024年の調査では、直葬や火葬式を選んだ人の割合は11.4%から9.6%にやや減少しています。この減少は、直葬に代わって再び従来型の葬儀を選ぶ人が増えつつあることを示しています。コロナ禍が落ち着いたことで、故人との最後の時間をしっかり持ちたいと考える家族のニーズが根強く、通夜や告別式を含む家族葬や一日葬への回帰が見られるのです。人々はやはり、故人とのお別れの時間を大切にしたいという想いを持ち続けていることがわかります。

    直葬による後悔

    一方で、直葬を選択した方の中には後悔の声も少なくありません。同じ全国調査では、葬儀の準備から実施後までを振り返った際の「後悔していること」を尋ねた質問で、家族葬、一般葬、一日葬を実施した方の過半数が「後悔していることはない」と答えました。しかし、直葬・火葬式を実施した方はその割合が38.7%にとどまっています。 具体的にどのような点で後悔を感じているかを尋ねたところ、「通夜をしなかったこと」や「火葬場でのお別れの時間が短かったこと」といった意見が目立ちました。直葬は費用面や手軽さが魅力ですが、お別れの時間の短さが心残りになるケースが多いようです。従来の葬儀では、故人との最後の時間をゆっくりと過ごし、心の整理をつけることが重要視されていましたが、直葬ではそのプロセスが省略されがちです。このため、故人を悼む時間が足りなかったと感じる人も少なくありません。 直葬による後悔については、こちらの記事もご覧ください。

    直葬を検討している方へ:後悔してしまう可能性のあるポイントとは?

    今後の展望と葬儀業界の対応

    今後、直葬の普及が進む中で、葬儀業界には新たな対応が求められるでしょう。例えば、直葬の後に少人数で行うお別れ会や、オンラインでの追悼サービスの導入など、新しい供養の形が模索されています。こうした取り組みによって、直葬に対する心の負担を軽減しつつ、多様なニーズに応えることができるかが鍵となりそうです。 さらに、直葬のスタイルそのものも今後は進化していく可能性があります。現在の直葬は、火葬のみでシンプルに行うケースが主流ですが、今後はしっかりとお別れができる新しいスタイルの直葬が登場するかもしれません。たとえば、火葬の前に故人と過ごす時間を長めに設けたり、少人数でのセレモニーを取り入れるプランなどが考えられます。また、オンラインでの追悼メッセージや写真を共有することで、故人をしのぶ場を作り出す新しい形式が増えていくでしょう。 これにより、直葬の持つシンプルさと費用面のメリットを維持しながらも、遺族が納得のいくお別れをできるような工夫が進むと予想されます。特に今後は、葬儀業界が提供するサービスの多様化が進み、家族ごとの価値観やニーズに応じた柔軟なプランが増えていくことでしょう。

    まとめ

    直葬は今後も増加する可能性が高いと言えますが、その背景には費用面やライフスタイルの変化、新型コロナウイルス感染症の影響が深く関係しています。統計データからも、特に2022年以降の急増が顕著であり、コロナ禍がこの変化を加速させたと言えるでしょう。しかし、直葬においてはお別れの時間の短さに対する後悔の声も多いため、今後は葬儀業界が新たな供養の形を提供し、直葬の形態自体もブラッシュアップされていくはずです。 しっかりとお別れができる直葬の登場により、多くの人が故人との最期の時間をより深く過ごすことができる新しいスタイルの直葬が、これからの葬儀業界における鍵となるかもしれません。 参照 https://www.e-sogi.com/guide/38066/ https://www.e-sogi.com/guide/38093/ https://www.e-sogi.com/guide/38135/ https://www.e-sogi.com/guide/46028/ https://www.e-sogi.com/guide/55135/

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