2025.4.24
はじめに
代襲相続とは
代襲相続が発生するケースと発生しないケース
発生する場合
発生しない場合
代襲相続人の範囲と条件
直系卑属(子、孫)のケース
兄弟姉妹の子(甥・姪)のケース
それぞれのケースで「一代限り」か「再代襲あり」かの違い
家系図付きで視覚的に解説
ケース別の代襲相続シミュレーション
孫が代襲相続する場合の具体例
甥・姪が代襲相続する場合の具体例
養子縁組をしていた場合の扱い
特別養子の場合の注意点
代襲相続人の相続割合と権利
法定相続分の計算方法
遺留分の有無とその範囲
相続税における基礎控除や影響
複数の代襲相続人がいる場合の分け方
誰が相続人になるのかを整理するために知っておきたいこと
実際の相続人を判断するために必要な確認項目
家族構成と法的関係をもとに、判断の流れを整理
判断が難しい・意見が分かれそうな場合は専門家への相談を検討
まとめ:代襲相続は慎重に進めましょう
相続の場面において、誰が財産を受け取るのかがすぐにわからないケースは少なくありません。中でも「本来相続人となるはずだった人がすでに亡くなっている」「相続権を失ってしまった」といった場合には、相続権が別の親族に引き継がれることがあります。これが「代襲相続」です。 代襲相続は、一般的な相続とは異なり、特有のルールや注意点が存在します。誰が相続人になるのか、どこまでの親族に相続権が移るのか、そしてその相続割合はどうなるのか——こうした点は、多くの方にとってなじみが薄く、判断を誤れば後々のトラブルの原因となりかねません。 この記事では、「代襲相 続とは何か」という基本から、発生条件や相続人の範囲、具体的なケーススタディに至るまで、わかりやすく整理して解説します。読み終わる頃には、「自分の家族の場合、誰が相続人になるのか」が明確になっているはずです。
代襲相続とは、相続が発生した際に、本来相続人になるはずだった人が死亡していたり、相続権を失っていた場合に、その人の直系の子(や甥・姪など)が代わりに相続する制度です。代襲とは、「代わって受け継ぐ」という意味で、亡くなった人の地位を引き継ぐ形で相続権が移行します。 例えば、被相続人(亡くなった方)に子がいて、その子がすでに亡くなっていた場合、亡くなった子の子(つまり孫)が代わって相続人になるというのが典型例です。これが「代襲相続」によるものです。 一方、通常の相続では、被相続人の配偶者、子、父母、兄弟姉妹といった法定相続人の順位に従って財産が分配されますが、代襲相続はこの順位の中に「既に亡くなっている相続人がいた場合」に発動します。 代襲相続という言葉が使われるのは、主に次のような場面です。 ・被相続人の子が被相続人より先に亡くなっていた ・相続人となるべき人が相続欠格・廃除によって相続権を失っていた このような状況では、相続人の地位をその子や兄弟姉妹の子が代わって受け継ぐことになります。法律に詳しくないと少し複雑に感じるかもしれませんが、要するに「相続すべき人がいないから、その子供や甥・姪が引き継ぐ」というイメージで捉えると理解しやすくなります。 次のセクションでは、実際に代襲相続が発生する具体的なケース、そして発生しないケースについて詳しく見ていきましょう。
代襲相続は、一定の条件を満たしたときにのみ発生します。その条件を知っておくことで、相続人が誰になるのかを正しく判断しやすくなります。ここでは、代襲相続が発生する典型的なケースと、発生しない例をそれぞれ解説します。
代襲相続が発生するのは、以下のいずれかの理由で本来の相続人が相続できないときです。 1. 相続人が被相続人より先に死亡していた場合 これは最も多い代襲相続のケースです。たとえば、被相続人に子がいて、その子がすでに亡くなっていた場合、その子(つまり被相続人の孫)が相続人になります。このとき、孫は「代襲相続人」として相続権を持ちます。 2. 相続欠格 相続欠格とは、一定の非行により法律上相続権を失うことを指します。たとえば、被相続人を殺害しようとした、詐欺や脅迫で遺言書を作らせた、あるいは遺言書を隠した・破棄したといった行為が該当します。このような場合、本来の相続人は相続できませんが、その子どもは代襲相続人として相続権を持つことになります。 3. 相続廃除 相続廃除とは、被相続人が家庭裁判所の手続きを経て、特定の相続人の相続権を取り消すことをいいます。これにより相続人は法的に排除されますが、その子どもは代襲相続人として権利を引き継ぐことができます。
代襲相続が「発生しない」ケースもあります。これは、誤解されやすいポイントなので特に注意が必要です。 1. 相続放棄 相続人が相続放棄を選んだ場合、その相続権は完全になくなりますが、代襲相続は発生しません。つまり、放棄した人の子どもも相続権を持ちません。これは、相続放棄が「自発的な意思によるもの」であるため、代襲という形で次に引き継がれるべきではないという法律上の考え方があるためです。 2. 廃除手続きがされていない場合 被相続人が「相続させたくない」と思っていたとしても、正式な廃除手続き(家庭裁判所の許可)がされていなければ、その人は相続人のままです。したがって、代襲相続も発生しません。あくまで法的手続きが完了して初めて、代襲相続の対象になるという点は重要です。 このように、代襲相続は「発生するか否か」が状況により明確に分かれています。次のセクションでは、代襲相続人になれる人の範囲と、その条件についてさらに詳しく掘り下げていきます。
代襲相続が発生した場合、「誰が代襲相続人になれるのか」という点が重要になります。この範囲と条件は、被相続人との続柄や、相続順位の違いによって変わってきます。
直系卑属とは、被相続人から見て下の世代、つまり子や孫などを指します。相続においては第一順位の相続人です。 たとえば、被相続人Aに息子Bがいて、BがAよりも先に亡くなっていた場合、Bの子C(Aにとっての孫)がAの代襲相続人になります。このように、子が相続できない場合に、その子(つまり孫)が相続人となるのが基本です。 ここで注意すべき点は、「再代襲」が認められているということです。たとえば、C(孫)もAが亡くなる前に死亡していた場合、Cの子(Aにとってのひ孫)が相続人となります。このように、子→孫→ひ孫と代襲が連続して発生することがあります。
被相続人に子がいない場合、相続順位は兄弟姉妹に移ります。この兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その子ども、つまり甥や姪が代襲相続人になります。 この場合は「一代限り」の代襲である点が特徴です。つまり、兄弟姉妹の子(甥・姪)までは代襲されますが、それ以降の世代(たとえば甥の子)は相続人にはなりません。 これは法律で明確に定められており、直系卑属と兄弟姉妹の子では代襲相続の「深さ」が異なる点として覚えておくとよいでしょう。
・直系卑属(子→孫→ひ孫):再代襲あり(何代にもわたり引き継がれる可能性がある) ・兄弟姉妹の子(兄→甥姪):一代限り(甥姪まで、再代襲はなし) この違いは、誰が法定相続人として扱われるかというルールに基づいています。直系卑属は家族の中で優先順位が高く、法定相続人として重要視されているため、より柔軟に代襲が認められているのです。
ここで、簡単な家系図を用いてイメージを整理しましょう。
ケースA:直系卑属の代襲相続
ケースB:兄弟姉妹の代襲相続
このように、誰が亡くなっているのか、誰が生きているのかによって相続人の顔ぶれは大きく変わります。次のセクションでは、こうした知識をもとに、実際のケース別に代襲相続をシミュレーションしていきましょう。
実際の家族構成や状況によって、代襲相続の内容は大きく変わります。ここでは、よくあるケースを取り上げ、それぞれの代襲相続がどのように機能するかをシミュレーション形式で解説します。
【ケース概要】 被相続人Aには2人の子(BとC)がいたが、長男Bは数年前に他界。Bには息子D(Aにとって孫)がいる。 この場合、Aが亡くなった時点で子Bはすでにいないため、Bの代わりにその子Dが相続人になります。 一方、もう一人の子Cは健在のため、相続人として名を連ねます。 【相続割合】 子が2人いた場合、法定相続分はそれぞれ2分の1ずつ。したがって、 C(健在の子)… 2分の1 D(亡くなったBの子=孫)… 2分の1(Bの分を代襲) このように、孫であっても代襲相続人として親と同じ割合を受け取ることになります。
【ケース概要】 被相続人Aには子がいないため、兄弟姉妹が相続人となる。しかし、そのうちの弟Bがすでに死亡しており、Bには娘C(Aの姪)がいる。 この場合、Aの兄弟姉妹のうち、Bが亡くなっているため、その子C(姪)がBの代わりに相続人となります。兄弟姉妹の人数によって相続割合が変わりますが、基本的にCはBの法定相続分をそのまま引き継ぎます。 【注意点】 甥・姪までしか代襲できない点に注意してください。もしCもすでに亡くなっていたとしても、Cの子(つまりAから見て姪孫)は代襲相続人にはなれません。
養子も法律上の子と同様に扱われるため、代襲相続の対象になります。たとえば、被相続人Aに養子Bがいて、Bがすでに死亡していた場合、Bの子C(Aにとっての孫)は代襲相続人になります。 養子だからといって不利になることはなく、実子と同じく代襲相続の対象になります。
特別養子制度は、養親との親子関係だけが残り、実親との法的な関係が完全に 断たれるという特徴があります。このため、実親の相続においては、特別養子となった子は相続人とはなりません。 一方、特別養子となった子が養親から見ての直系卑属であれば、その子どもも代襲相続人として認められます。つまり、「どの親の相続について代襲が発生しているのか」によって判断が分かれます。 【ポイント整理】 ・普通養子縁組:実子と同様に代襲相続の対象 ・特別養子縁組:養親の相続のみが対象、実親の相続には関与しない このように、家族関係の法的な位置づけが相続の可否を左右します。次は、代襲相続人が実際にどれくらいの財産を相続できるのか、その割合と権利について掘り下げていきましょう。
代襲相続が発生した場合、その代襲相続人がどれだけの財産を相続できるかは、基本的には「本来の相続人が受け取るはずだった相続分」と同じです。ただし、相続人の人数や代襲相続人が複数いる場合など、状況に応じて調整が必要です。
代襲相続人の相続分は、代襲された人(つまり死亡した親など)の法定相続分をそのまま引き継ぎます。具体例で見てみましょう。 【例】 被相続人Aには子どもが2人(BとC)いたが、Bはすでに亡くなっており、Bには2人の子(DとE)がいる。この場合、相続人は以下のようになります。 ・C(健在の子):法定相続分1/2 ・D、E(亡くなったBの子=孫):法定相続分1/2を2人で分割 → それぞれ1/4ずつ このように、代襲相続人が複数いる場合は 、もともとの相続分を等分します。
遺留分とは、一定の法定相続人が最低限受け取れるべき相続財産の割合のことです。遺言で他人にすべての財産を譲ると書かれていても、遺留分の権利は保護されます。 代襲相続人であっても、遺留分の権利は認められます。つまり、本来相続するはずだった人が遺留分を持っていた場合、その地位を引き継いだ代襲相続人も同じように遺留分を主張できます。 【注意点】 兄弟姉妹やその代襲相続人(甥・姪)には遺留分はありません。遺留分が認められるのは、配偶者・子・直系尊属(父母など)に限られています。
相続税の課税対象となる場合、基礎控除の額や課税の仕組みにも代襲相続が影響を与えます。 相続税の基礎控除額は、以下のように計算されます。 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) 代襲相続人も法定相続人に含まれるため、控除額の計算には加算されます。例えば、相続人が子1人+代襲相続人2人だった場合、「相続人の数は3人」とカウントされることになります。 ただし、相続税の負担は相続分に応じて変わるため、代襲相続人が相続する額が多い場合、それだけ税額も増える可能性があります。相続財産が高額になる場合は、税理士に相談することをおすすめします。
代襲相続人が 複数いる場合は、代襲される人の相続分を、代襲相続人で「均等」に分けるのが原則です。 【例】 被相続人Aに子BとCがいたが、Bはすでに亡くなっており、Bの子が3人いた場合。 ・C(健在の子):法定相続分1/2 ・Bの子3人:法定相続分1/2を3等分 → それぞれ1/6ずつ 重要なのは、あくまで「誰の相続分を代襲しているか」に基づいて割合を計算するという点です。また、代襲相続人同士の間での相続分の分配は、法律上の規定通りに均等であるため、家庭内の合意がない限り、個別の事情(収入差や面倒を見たかどうかなど)は考慮されません。 次のセクションでは、「誰が相続人になるのか」を明確に判断するために知っておくべきポイントを紹介します。相続の全体像を正しく理解するために、判断の流れをしっかり整理しましょう。
代襲相続を含む相続全般において、「誰が相続人となるのか」を正確に把握することは、遺産分割や手続きの初期段階で非常に重要です。間違った判断をしてしまうと、遺産分割協議が無効になったり、後から新たな相続人が現れてトラブルになることもあります。ここでは、相続人の判断に必要な要素や流れを整理してご紹介します。
相続人を特定するには、以下の情報を正確に把握する必要があります。 1. 被相続人の戸籍情報 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取り寄せる必要があります。これにより、配偶者や子どもの有無、認知された非嫡出子など、法的に相続権を持つ人を確認できます。 2. 家族構成の把握 現存する家族の構成、すでに亡くなっている人、その人の子ども(つまり代襲相続人)の有無などを整理します。このとき、再婚や養子縁組が関係している場合には、その記録も確認が必要です。 3. 相続順位の確認 法律で定められた相続の順位は以下の通りです。 第1順位:子(代襲相続がある) 第2順位:父母(直系尊属) 第3順位:兄弟姉妹(代襲相続は甥・姪まで) たとえば、子がいなければ第2順位の父母、父母がすでに亡くなっていれば第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移ります。代襲相続は第1順位と第3順位の相続でのみ発生します。
相続人を明確にするためには、以下のような流れで確認を行うと整理しやすくなります。 1.被相続人に配偶者がいるかを確認(常に相続人になる) 2.第1順位(子)がいるか確認 いない場合、または死亡・欠格・廃除である場合は代襲相続の可能性を確認(孫やひ孫) 3.第1順位もいなければ、第2順位(父母など)を確認 4.第2順位もいなければ、第3順位(兄弟姉妹)を確認 兄弟姉妹が死亡していれば、その子(甥・姪)を代襲相続人として確認 このように段階的に確認していくことで、法律に沿った正確な判断ができます。
代襲相続の判断は一見するとシンプルに見えますが、家族構成が複雑だったり、養子や再婚、非嫡出子、遺言の有無などが絡むと、非常に判断が難しくなります。 また、相続人が複数いて関係性が希薄だったりすると、話し合いが進まなかったり、後々トラブルに発展するリスクもあります。こうしたリスクを避けるためには、早い段階で弁護士や司法書士など、相続の専門家に相談するのが有効です。 専門家は、法的な視点で相続人の確定をサポートし、遺産分割協議書の作成や相続登記、相続税の申告なども含めた総合的な支援が可能です。特に代襲相続が絡むケースでは、相続人全員の正確な特定が手続きの前提となるため、専門家の助けを借りることは安心かつ確実な選択といえるでしょう。 次は、ここまでの内容を総括し、代襲相続において大切なポイントをまとめます。最後まで読めば、実際の行動に移すための視点が得られるはずです。
代襲相続は、一見すると「亡くなった人の代わりに誰かが相続する」というシンプルな制度のように思われがちですが、実際には細かな法律の規定や家族関係の複雑さによって、判断や手続きが難しくなるケースが多く見られます。 特に重要なのは、以下のようなポイントです。 ・代襲相続が発生するのは、「相続人が死亡」「相続欠格」「相続廃除」の場合に限られます。相続放棄では代襲相続は発生しません。 ・代襲相続人になれるのは、子の子(孫)や兄弟姉妹の子(甥・姪)などですが、再代襲の有無はその関係性により異なります。 ・相続分や権利は、本来の相続人が持っていた地位をそのまま引き継ぐ形で決まります。複数の代襲相続人がいる場合は均等に分け合うことになります。 ・遺留分や相続税など、相続に関する権利義務も本来の相続人に準じて発生するため、代襲相続人といえども注意が必要です。 ・家族関係や戸籍の状況によっては相続人の判断が複雑になるため、判断に迷う場合や相続人の間で意見が分かれる場合には、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。 代襲相続の問題は、放置しておくと遺産分割協議のやり直しや、無効となるリスクもあるため、スムーズで正確な手続きを進めるためには、早めに行動を起こすことが重要です。 相続は人生のなかで何度も経験するものではありませんが、だからこそ「誰が相続人なのか」「自分はどう動くべきか」をしっかり理解しておくことが、円満な相続の第一歩となります。 遺産分割や相続手続きでお悩みの方は、代襲相続を含めた相続全体の構造を理解し、早い段階で信頼できる専門家と連携することが、安心と納得のいく相続の実現につながるはずです。 相続は家族にとって大切な問題です。誰が財産を受け継ぐのかを明確にし、適切な手続きを行うことで、後の世代に不安やトラブルを残さないよう、慎重かつ丁寧に進めていきましょう。
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