2024.10.25
終末期医療(ターミナルケア)は、患者が人生の最後の時間を過ごす上で、非常に大きな役割を果たします。延命を目的とした治療を中止し、患者が可能な限り安らかに、そして自分らしく過ごせることを目指す医療です。本記事では、終末期医療の定義や目的、ケアの内容、受けられる場所、家族のサポートについて詳しく解説します。
終末期医療は、治 療の効果が見込めず余命が限られている(通常数週間から数ヶ月以内)と判断された場合に行われる医療です。老衰や進行がん、神経変性疾患など、あらゆる治療方法が効果を発揮しない状態において、患者の苦痛を取り除き生活の質(QOL)を保つことを目的とします。 終末期医療の開始には、複数の医師の見解や家族との合意が必要です。公益社団法人全日本病院協会の『終末期医療に関するガイドライン』では、治療の効果が見込めないと複数の医師が客観的に判断し、患者と家族が納得していることを条件としています。
緩和ケアは、病気の治療中にも提供されるケアであり、患者の苦痛や症状を緩和しつつ、治療の効果を高めることを目的とします。一方で終末期医療は、延命治療をやめ、患者が最後の時間を尊厳を持って過ごせるよう支援することを重視しています。ケアの開始時期と目的が異なるため、緩和ケアは治療の早期から行われ、終末期医療は延命治療をやめた段階から始まります。
終末期医療は、以下の3つのケアを軸に構成されます。
終末期には、患者が感じる痛みや不快感を和らげるために、医療スタッフが様々な手法を用いてケアを行います。具体的には、次のような方法が含まれます。 ・疼痛管理:鎮痛薬や麻酔薬を用いて痛みを和らげます。疼痛は終末期の患者にとって最もつらい症状の一つであり、疼痛緩和が重視されます。 ・呼吸のサポート:酸素療法や呼吸補助器具の使用により、呼吸困難を軽減します。 ・栄養管理:病状が進行すると食事の摂取が困難になるため、栄養補給を工夫します。点滴や経管栄養を用いたり、食べやすい形状の食事を提供したりします。
精神的なケアは、患者とその家族の心の負担を軽減するために非常に重要です。死を目前に控えた患者には、恐怖や不安がつきものです。そのため、次のような方法が用いられます。
・環境の整備:病室や療養の場を患者がリラックスできるように整えます。患者が好きな音楽を流したり、家族との写真を飾ったりして、安心感を与えます。 ・心理カウンセリング:カウンセラーや心理士によるカウンセリングが行われ、不安や悩みを話せる機会を提供します。 ・思い出の共有:家族や友人と共に過去の思い出を語り合う時間を設け、心を穏やかに保てるようにします。
社会的なケアは、患者と家族が抱える経済的な問題や社会的な不安を軽減することを目的とします。たとえば、遺産の整理や法律的な手続きを支援することで、家族の負担を軽減します。また、ソーシャルワーカーが中心となり、患者の家族が安心して過ごせるように調整します。
終末期医療は、患者が最も自分らしく過ごせる場所を選択することが理想とされます。選択肢には以下の3つがあります。
専門の緩和ケア病棟やホスピスがあり、急変時の対応が迅速で家族の負担も軽減されます。面会時間が制限される場合もあるため、家族との時間をどのように過ごすかを検討することが重要です。
介護スタッフや医療スタッフが24時間体制でサポートを行うため、患者が安心して生活できる環境が整っています。他の利用者との交流もあり、社会的なつながりを感じることができます。
慣れ親しんだ自宅で過ごすことで、家族と最後の思い出をつくりやすいというメリットがあります。しかし、家族の負担が大きくなるため、訪問看護や医療機関との連携が重要です。
終末期の患者を支える際、家族が果たす役割は非常に大きいです。以下のようなサポートが家族に求められます。
本人がやりたかったことや、行きたかった場所に連れて行くなどして、思い出を共有することが大切です。
葬儀の準備や遺産の整理など、本人が進めるべき終活をサポートします。
家族がそばにいることで、本人に安心感を与えます。家族の存在が本人にとっての支えとなります。
終末期医療の費用は、選択する療養場所やケアの内容によって異なります。たとえば、病院での入院費用や自宅での訪問診療費用などがかかります。また、介護施設では看取り介護加算が加わることもあります。医療保険や高額医療制度を活用することで負担を軽減できますが、事前に費用の見積もりを立てておくことが重要です。
終末期医療は、延命治療を中止し、患者が自分らしく最後を迎えることを目的とした医療です。身体的、精神的、社会的な支援を通じて、患者と家族の生活の質を向上させることが目指されます。患者が最期をどのように過ごすかは、家族の理解とサポートが欠かせません。 終末期医療の準備を進める際は、患者の意思を尊重し、最も適した環境を整えましょう。家族が寄り添うことで、患者が安心して最期の時間を過ごせるよう支援し、後悔のない時間をつくることが大切です。 (参照:https://seiwa-h.org/schospice005/)
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