2024.10.28
沖縄では、お墓参りが他の地域とは異なる独特の文化として根付いています。沖縄独自の伝統や風習に基づいたお墓参りは、家族の絆や祖先とのつながりを深める大切な行事です。特にシーミー、十六日(ジュウルクニチー)、タナバタが沖縄の3大お墓参り行事として知られています。さらに、お墓参りの際には、供物としてウサンミという重箱料理が欠かせません。本記事では、それぞれの行事の意味や風習、行われ方について詳しく解説し、ウサンミの持つ意味についても紹介します。
沖縄では、3つの主要なお墓参り行事が存在します。それぞれの行事が持つ意味や目的は異なりますが、いずれも祖先とのつながりや家族の絆を大切にすることが共通のテーマです。 1. 清明祭(シーミー):家族の集まりを祝う行事 清明祭(シーミー)は、旧暦の3月に行われる沖縄独自の行事で、家族や親戚が一堂に会し、祖先を敬いながら食事を共にする大切なお墓参りの機会です。シーミーはお祝い事の一つとしての意味を持っており、祖先を敬うと同時に、家族の絆を強める場でもあります。家族全員が集まり、お墓の前に供物を並べ、宴会のように和やかな雰囲気で過ごすのが特徴です。 しかし、沖縄の風習では、喪中の期間にはお祝い事を控える習慣があるため、シーミーも喪中の家族は控えることが一般的です。 2. 十六日(ジュウルクニチー):あの世の正月 十六日(ジュウルクニチー)は、特に宮古や八重山地方で盛大に行われる行事です。旧暦の1月16日に行われ、あの世 の正月とされるこの日は、祖先がこの世に戻ってくると信じられています。ジュウルクニチーは法事的な意味合いが強く、厳粛な雰囲気の中で供養が行われます。この日は、供物として沖縄料理や祖先が好んだ食べ物を供え、お墓の前で静かに祈りを捧げます。 3. タナバタ:祖先の霊を迎え供養する タナバタも沖縄では重要な行事の一つです。旧暦の7月に行われるタナバタは、本土の七夕と異なり、祖先の霊を迎えて供養する行事です。タナバタの日には、お墓参りを行い、お墓の前で果物や料理を供えます。タナバタの行事は、祖先の霊が戻ってきて家族を守ってくれることを願い、供養の意味が込められています。
沖縄のお墓参りには、本州とは異なる独特なルールがいくつか存在します。これらのルールは、沖縄独自の信仰や霊との関係を重んじる文化に根ざしています。以下では、沖縄のお墓参りで守るべきルールについて詳しく見ていきます。 1. 本州ではいつでもお墓参りができるが、沖縄では時期を選ぶ 本州では、家族が故人を偲びたいと感じたときに、自由にお墓参りをすることができます。お彼岸やお盆、命日などの特別な時期に加え、日常的に訪れることもよくあります。お墓は故人とのつながりを感じる場所とされ、好きな時に訪れて心の平安を得ることができるとされています。 一方で、沖縄ではむやみにお墓参りを行わないというルールがあります。沖縄では、決まった行事や特定の時期に合わせてお墓参りを行うことが一般的で 、例えば清明祭(シーミー)や十六日(ジュウルクニチー)、タナバタなどの年中行事があります。それ以外の時期にお墓を訪れることは避けられることが多く、適切なタイミングでのみ祖先を敬うことが重視されています。 2. 自分の家以外のお墓は拝まない 本州では、親族や知人のお墓を訪れて供養を行ったり、祈りを捧げることが比較的自由に行われています。他人のお墓に手を合わせることで、その故人への敬意を表す文化が根付いています。 しかし、沖縄では自分の家以外のお墓を拝むことは避けられています。他の家のお墓を拝むことで、霊との関係に干渉し、不要な影響を受ける可能性があると信じられています。沖縄では、家族ごとの霊とのつながりを非常に大切にしており、自分の家族の霊を優先的に敬うことが重視されます。 3. お墓の扉を開くときは、妊婦は近づかない 本州では、お墓参りの際に特別な制約はあまりなく、妊婦も家族と一緒にお墓参りを行うことが一般的です。妊婦が新しい命を宿しているということを尊重しつつも、特別な配慮が求められる場面は多くありません。 対して、沖縄ではお墓の扉を開ける際に妊婦が近づかないという独特の風習があります。沖縄では、お墓の扉を開けることによって霊が出入りしやすくなると考えられており、妊婦が霊の影響を受けやすいとされています。特に妊婦は新しい命を育んでいるため、霊の影響を避けるための配慮として、このようなルールが守られています。 4. まず「ヒジャイガミ」へお参りを報告する 沖縄では、お墓参りの際に最初に「ヒジャイガミ」に報告するという習わしがあります。ヒジャイガミとは、沖縄の墓内に祀られている左側の神様を指します。お墓参りをする際は、最初にヒジャイガミへ訪問の報告を行い、その後に祖先への供養を行います。これにより、先にお墓全体を守護する神様への礼を尽くし、その後で祖先に祈りを捧げる順序を守ることが重要とされています。このルールは、霊との正しい関係を保ち、敬意を払うための大切なマナーです。
沖縄のお墓参りには欠かせない供物として「ウサンミ」があります。ウサンミは、重箱に詰められた伝統的な料理で、沖縄の祖先供養の中心的な役割を担っています。ウサンミに詰められる料理は家庭や地域によって異なりますが、以下のような一般的な料理が含まれます。 ・三枚肉(サンミーニク) 甘辛く煮込んだ豚肉。沖縄の伝統的な煮物料理で、祖先が喜ぶ料理として定番です。 ・昆布の煮物 昆布や人参、かまぼこを煮込んだ料理。昆布は長寿や健康を象徴するとされ、供物としての意味も大きいです。 ・天ぷら 魚や野菜、かまぼこを揚げたもの。見た目も華やかで、様々な種類の天ぷらが用意されます。 ・かまぼこ 赤や白のかまぼこは祝いの象徴として用いられ、彩りを添えます。 ・紅白の餅 祝いの意味を込めた紅白の餅は、供え物の定番です。 これらの料理を重箱に美しく詰め、祖先に供えます。沖縄では、供物の見た目の美しさやバランスにもこだわることが多く、ウサンミは心を込めた祖先への感謝の象徴です。供えた後は、家族や親戚が集まり、料理を分け合いながら食事を共にすることが一般的です。
お墓参りの最後には、供えたウサンミを家族で分け合いながら食べる「ウサンデー」が行われます。ウサンデーは単なる食事ではなく、家族のつながりを再確認し、祖先と共に時間を過ごすという深い意味があります。 ウサンデーでは、供えた料理をみんなで食べることにより、祖先も一緒にその場にいると感じられます。この食事を通じて、家族の絆が深まり、祖先に対する感謝の気持ちを共有することができるのです。供物を分かち合うことは、沖縄の人々にとって祖先供養の重要な一部であり、祖先と子孫のつながりを象徴する行為となっています。
沖縄のお墓参りは、独特の風習と深い意味を持っています。亀甲墓や破風墓といった特徴的なお墓の形状、清明祭(シーミー)、十六日(ジュウルクニチー)、タナバタといった3大行事を通じて、祖先への感謝や家族の絆を再確認する時間となっています。供物として供えるウサンミは、祖先への敬意と感謝を込めた重要な料理であり、家族全員でその料理を共にする「ウサンデー」によって、より深いつながりを感じられます。
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