2025.2.5
「学び直し」や「生涯学習」という言葉を耳にすることが増えた昨今、全国の自治体でも、市民が学びを深め、地域とのつながりを強めるための取り組みが広がっています。そんな中、埼玉県新座市では、市内の大学と協力し、誰もが気軽に学びに参加できる「にいざプラスカレッジ」を運営していることをご存じでしょうか? 今回、私たちはこのにいざプラスカレッジの、実際の講義の様子や、受講者の声を新座市に伺ってきました。地域と連携した学びの場がどのように機能し、どんな効果を生んでいるのかをレポートします。また、この記事を通じて「自分の住む地域にもこんな取り組みがあ るかもしれない」「参加してみたい!」と思ってもらえたら嬉しいです。 それでは、にいざプラスカレッジの魅力に迫っていきましょう!
新座市では、市民の皆さんが自分を高め、地域を高める学習の場を創出し、学んだことを地域に生かし、市民一人一人が生き生きとした人生を送れるようにするため、市内にある3大学(跡見学園女子大学、十文字学園女子大学及び立教大学)の協力のもと、市制施行30周年記念の年である平成12年度に「新座市民総合大学」(以下、「市民大学」という。)を開校しました。 市民大学では、地域福祉、環境、国際、子育て、スポーツ、観光、新座の歴史、子どもの読書応援、健康づくり、緑地保全、食育、まちづくりなど毎年様々なテーマの学部学科を3学科程度開校し、多くの市民の皆さんの学習意欲に応えるとともに、修了生のうち希望者には、学んだ内容に関連する市のボランティアサポーター(例:にいざの元気推進員、新座市環境保全協力員等)への委嘱を行い、学んだことを地域に還元していただくことを目的の一つとしていました。 その後、令和2年度の市制施行50周年及び市民大学開校20周年を機に、市民の生涯学習意欲に更に対応し、市民も地域も「プラス」となる学び舎(仲間の集まり)とするため、名称を「にいざプラスカレッジ」とし、内容の一新を図りました。カレッジ(college)とは、高等教育機関、総合大学の構成学部やそれを模した講座等のことで、ラテン語で「仲間の集まり」が語源となっています。 新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年度から3年間休止を余儀なくされましたが、令和5年度に「にいざプラスカレッジ」を開学しました。 開学に当たっては、誰もが気軽に参加でき、気軽に続けられることを第一に、今までよりも期間や回数をコンパクトにしました。記念すべき初年度は、市民の皆さんの学び(生涯学習意欲)を高めることを目的に、以前から市民要望が高かった教養をテーマとしたコース、市民大学でも人気のあった健康づくりや、地域活動等について学ぶまちづくりのコースを開講しました。開学2年目となる今年度は、新たにスポーツウエルネスをテーマとしたコースを新設するなど、多様な学習意欲に応える内容としたところ、各コース定員以上の応募があり、市民の皆さんの期待度が感じられます。
にいざプラスカレッジでは、市内にある3つの大学に協力をいただき運営しております。各コースのカリキュラムや講師案は、各大学から選出いただくコースコーディネーターの先生に検討いただき、市長を委員長、教育長を副委員長とし、市内3大学の先生や市内団体代表の方で構成する「にいざプラスカレッジ運営委員会」において、協議・決定します。運営委員会を中心に、コーディネーター、大学事務局と市事務局が連携・協力して進めていく運営体制となっています。 また、講義については、各コース5~7回としており、初回講義の前にオリエンテーションを、最終回講義後に修了式をコースごとに行っています。オリエンテーションでは、事務局からの連絡事項を伝えるほか、受講生同士の交流を図ることを目的に他己紹介(2人一組となり、お互いの紹介をしあう)の時間を設けています。修了式では、コーディネーターの先生から修了証や皆勤賞の授与を行います。すべてのコースで座学だけではなく、演習や発表の機会を設けるようにしています。 当日の運営については、過去の修了者がボランティアとして加わり、職員とともに準備や片付け、進行や記録等を行っています。今年度は、オリエンテーションや修了式の進行もボランティアスタッフが中心となり行いました。 また、会場は各大学に提供いただいており、受講生は大学施設で講義を受けるほか、講義開講日は、大学内の図書館図書を閲覧したり食堂・カフェを利用したりすることもでき、大学生の気分を味わいながら、大学の先生を中心とした講師陣から専門的な講義を受けることができます。 にいざプラスカレッジでの講義は、自らの学び(生涯学習)を深めることを目的とし、以前の市民大学のようにサポーターへの委嘱は行っておりませんが、学びを活動につなげたいと考える受講生に向けて、講義最終日には市で行っている様々なボランティア活動の資料を設置し、興味のある地域活動へつなげる情報の提供を行っています。
教養コースは、市内の跡見学園女子大学を会場としています。 以前から、市民から要望の多かった教養としての学びを深めるコースです。カリキュラム内容は、教養コースコーディネーターである跡見学園女子大学の先生が毎年検討し、令和5年度は「朗読」、令和6年度は「美術鑑賞」をテーマに開講しました。 令和6年度は、「アート・コミュニケーター講座~対話による鑑賞を通じて美術鑑賞の楽しさを共有しよう~」をテーマとし、コーディネーターでもあります同大学文学部教授の栗田秀法先生に、西洋や日本における伝統美術・近代美術に関する講義や、鑑賞者自身がそれぞれ気付いたことを話し合いながら美術鑑賞を行う対話型鑑賞についてご講義を頂きました。その他、東京国立博物館研究員や実践女子大学の先生から、浮世絵や江戸時代の絵画についての講義を頂きました。
受講生は20代から80代までと幅広く、平均は60代です。受講のきっかけは、美術鑑賞が趣味、初めて聞く対話型鑑賞に興味を持ったなどテーマに興味をもった方が大半でした。また、講師陣に魅力があった、大学キャンパスに通いたかった、自身の仕事や活動に役立つと思ったという意見もありました。演習の時間では、毎回異なるグループで対話を重ね、受講生間の交流も図ることができました。受講生に行ったアンケートでは、回答者全員が講義内容に満足又はまあまあ満足と答えており、「美術鑑賞の視点で学びになった。」、「大学の授業のような質の高い講義で、受けられてよかった。」、「楽しく受講できた。」等の感想を頂きました。 また受講したい、次回も楽しみにしているといった声もいただき、大変嬉しく思っています。 教養はとても幅広いテーマとなりますので、今後も受講生の皆さんの声を参考にしながら検討してまいりたいと存じます。
まちづくりコースは、市内の十文字学園女子大学を会場としています。 以前の市民大学でも学科として開講しており、まちづくりに関心を持つ方が地域活動に携わるきっかけとなるようなテーマを扱うコースです。カリキュラム内容は、まちづくりコースコーディネーターである十文字学園女子大学副学長兼教育人文学部教授の星野敦子先生が検討し、令和5年度は「地域共生社会」、令和6年度は「新座市における地域活動」をテーマに開講しました。 令和6年度は、「新座市における地域活動―令和の時代に生きる―」をテーマとし、各回、実際に市内で活動している様々な団体の方を講師としてお招きし、それぞれの活動につ いてご講義を頂きました。毎回前半を講義、後半をトークタイムとし、トークタイムでは、今年度のコーディネーターでもあります星野先生がファシリテーターとなり、受講生は、講義での気付きや疑問などをグループワークで洗い出して発表したり、講師や活動団体の方を交えた意見交換や質疑応答を行ったりすることができました。トークタイムの時間を設けることで、より学びを深めることができました。
受講生は30代から80代までと幅広く、平均は60代です。受講のきっかけは、テーマに興味をもった方が多くいる中で、大学キャンパスに通いたかった、自身の仕事や活動に役立つと思った、他の受講生と交流する機会を持ちたかったという意見も3~4割程度ありました。毎回のトークタイムでグループワークを重ねていくなかで交流が深まり、講義終了後も活動について語り合うなど、受講生同士の交流も見受けられました。 受講生に行ったアンケートでは、回答者の9割が講義内容に満足又はまあまあ満足と答えており、「新座市の良さを学ぶことができた。」、「このような場所から新たな活動が始まると思う。」、「毎回疑問点や学びをグループで話し合えて、意見交換ができ良かった。」等の感想を頂きました。 受講生の中には、これから地域で何か活動したいと考えている方も多く、自分たちの住むまちで実際に活動している方々の話は、とても興味深かったようです。
ウエルネスコースは、市内の立教大学を会場としています。 令和6年度からの新設コースで、自分自身の心と体の健康(ウエルネス)とスポーツをテーマとしたコースです。カリキュラム内容は、ウエルネスコースのコーディネーターである立教大学スポーツウエルネス学部特別専任教授の杉浦克己先生が検討しました。 「ウエルネスの学びと実践」をテーマとし、同大学教授による、食事や栄養・運動と睡眠の関係といった講義や、新座市スポーツ協会会長による地域スポーツ推進の取組についての講義を受けました。また、体育館・グラウンド等の大学施設を使用して、ストレッチやみんなで楽しむレクリエーション(モルック)等、実際に体を動かしながら学びを深めました。最終回では、グループごとにまとめた各回での学びを発表し、コーディネーターの杉浦先生から講評を頂きました。
受講生は30代から80代までと幅広く、平均は60代です。受講のきっかけは、テーマに興味をもった方が大半で、大学キャンパスに通いたかった、自身の仕事や活動に役立つと思ったという意見もありました。 受講生に行ったアンケートでは、回答者全員が講義内容に満足又はまあ まあ満足と答えており、「毎回充実していてよかった。」、「自宅近くの大学で受講できてよかった。」、「立教大学の色々な施設を利用できて楽しかった。」等の感想を頂きました。 受講生それぞれが各講義を通してウエルネスな生活を送るための学びを深め、これから楽しく実践していきたい、少しでも自分自身の生活に生かしていきたいという感想をお持ちになっていました。
対象:新座市内在住又は在勤・在学の18歳以上で学習意欲のある方 申し込み方法:市ホームページの専用フォーム(入学案内リーフレットにQRコードも表示)、ファックス(入学案内にある申込用紙を使用)又は官製はがきに必要事項を記入のうえ、生涯学習スポーツ課へ 費用:全コース3,000円 注意事項:応募者数が定員を超えた場合は、抽選により受講者を決定する。
※ 例年、6月下旬~7月中旬頃に申込受付。詳細は、市広報や市ホームページ、市内公共施設等に配布する入学案内を参照していただきたい。
にいざプラスカレッジ公式HP
【にいざプラスカレッジ】※令和6年度の情報です。次年度の詳細は未定。
1.時期 令和6年9月~12月 土曜日午前10時~正午 2.回数 各コース7回 3.講義時間 120分 4.定員 30名 5.受講料 3,000円 6.会場 教養コース:跡見学園女子大学 まちづくりコース:十文字学園女子大学 ウエルネスコース:立教大学 7.その他 初回講義前にオリエンテーション、最終回講義後に修了式をコースごとに実施するため、初回と最終回は、午前10時から午後0時30分までとなります。
今回、にいざプラスカレッジを取材し、地域とつながる学びの場がどれほど多くの人の人生を豊かにしているのかを実感しました。受講者の皆さんが、「学ぶ楽しさ」「人とつながる喜び」を味わいながら、生き生きと過ごしているとお聞きしたのが印象的でした。 にいざプラスカレッジのような生涯学習の場は、全国のさまざまな自治体でも運営されています。「地域のことをもっと知りたい」「新しい知識を身につけたい」「同じ興味を持つ人と交流したい」と思ったら、ぜひお住まいの自治体のホームページや広報誌をチェックしてみてください。あなたの街にも、きっと素敵な学びの場があるはずです! もし、「こんな取り組みが近くにあったらいいのに!」と感じたら、自治体に問い合わせたり、地域で学びの場を作る活動に参加 したりするのも一つの手です。学びは、いつからでも、どこからでも始められます。あなたも、地域とつながる新しい学びの一歩を踏み出してみませんか?
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