遺贈と税金の基本を徹底解説|公的機関への寄付で相続税が非課税に?

2025.4.8

  • 相続

近年、日本国内において「遺贈による寄付」の件数が大きく増加しています。かつては相続といえば家族や親族に財産を分配するのが一般的でしたが、現代ではその価値観に変化が生じており、「自らの財産を社会のために使ってほしい」と願う人が増えているのです。 この動きの背景には、いくつかの社会的・心理的要因が関係していると考えられます。第一に挙げられるのが、高齢化の進展と終活意識の高まりです。人生100年時代を迎え、多くの高齢者が老後の生活設計や死後の手続きを自分で考えるようになっています。その中で、「遺言書を書いておく」「葬儀や墓の準備をする」といった準備の一環として、「遺贈で寄付をする」という選択肢に関心が集まってきています。 また、実際の事例を見ても、子どもがいない、あるいは相続人との関係性が相対的に希薄なケースにおいて、築き上げた財産を公共のために役立てたいという思いから、遺贈寄付を選ぶ人が一定数存在しています。地域の文化施設、自然保護団体などに対して遺贈された資産が、施設の整備や、地域住民や子どもたちに向けた公開イベント・講座の開催などに活用されている例も報告されています。 こうした遺贈は、寄付者の価値観や人生観を反映し、死後もその意志を社会に残す手段として注目されています。単なる財産の移転ではなく、「自分らしい最期の社会貢献」としての遺贈寄付は、今後ますます広がりを見せるでしょう。

遺贈とは?種類と仕組みを解説

「遺贈」とは、被相続人(故人)が遺言によって自身の財産の一部または全部を、相続人や第三者に譲る行為を指します。これは、民法第964条に基づき明文化された制度であり、個人の最終的な意思表示として法的効力を持ちます。通常の相続と異なり、「遺贈」は遺言書によって明示されるため、誰に、どの財産を、どのように譲るかを本人が自由に決められる点が特徴です。 遺贈は、近年の終活意識の高まりと共に注目を集めており、財産を血縁者に留めるのではなく、広く社会に還元したいという価値観の変化の中で、その活用が広がりを見せています。特に、社会貢献を目的とした遺贈寄付という形が多く見られ、個人の思いが地域や公益のために生かされる重要な手段となりつつあります。

遺贈の種類

遺贈には大きく分けて2つの形式があり、それぞれ法律的な意味や実務上の扱いが異なります。正確な理解は、遺言書を作成する際にも、受遺者が対応する際にも不可欠です。

遺贈 種類

1. 包括遺贈(ほうかついぞう) 包括遺贈とは、被相続人の全財産または一定割合を包括的に譲る形式です。たとえば、「私の全財産の3分の1を〇〇団体に遺贈する」といった内容が該当します。 この形式では、受遺者は相続人と同じような立場となり、相続財産の取得に加えて債務(借金や未払い金)も相続する義務が生じるため、注意が必要です。また、相続開始後に家庭裁判所の許可を得て相続放棄することも可能ですが、原則として債務も含めて承継されることを念頭に置く必要があります。 包括遺贈のメリットは、遺言者が財産の詳細な内訳を指定しなくても遺志を示せる点にあります。一方で、受け取る側にとっては財産の範囲や内容が不透明になるリスクもあり、事前の確認や信頼関係の構築が不可欠です。 2. 特定遺贈(とくていいぞう) 特定遺贈は、遺贈する財産を具体的に特定した上で譲渡する方法です。たとえば、「東京都内の不動産をAに遺贈する」「〇〇銀行の口座にある預金を〇〇団体に遺贈する」といったケースがこれにあたります。 特定遺贈では、債務の承継はなく、指定された財産だけが移転対象となります。そのため、遺贈を受ける側にとっては管理や受け入れがしやすく、リスクも比較的低いのが特徴です。遺贈寄付の多くはこの特定遺贈の形で行われており、団体側も受け入れ体制を整えている場合が増えています。 ただし、遺言書で特定された財産がすでに処分されていたり、他人と共有していたりする場合は、遺贈の効力が失われることもあります。遺言書作成時には、財産の現況を把握し、記載内容を明確にすることが重要です。

遺贈の流れ

遺贈は、単に遺言書を残せば完了するというものではなく、遺言の作成、受遺者との確認、遺言執行、財産の移転という複数の段階を経て初めて成立します。以下に、一般的な流れを4つのステップに分けて詳しく解説します。

1. 遺言書の作成

遺贈の実行には、まず法的に有効な形式で遺言書を作成する必要があります。遺言書の種類には以下の3つがあります: 1.自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん) 特徴 ・遺言者が全文、日付、氏名をすべて自筆で記し、押印します。 ・2020年の法改正により、財産目録についてはパソコン作成可となり、署名・押印で有効に。 ・費用はかからず、手軽に作成できる反面、紛失や改ざんのリスクがあります。 法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、安全に保管可能です。 2.公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん) 特徴 ・公証人が作成し、公証役場で保管されるため、最も安全かつ確実です。 ・証人2名が必要で、相続人などの利害関係者はなれません。 ・費用はかかるものの、無効のリスクがほぼゼロで、スムーズな執行が可能です。 3.秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん) 特徴 ・内容を誰にも知られず作成できますが、公証役場で封印・手続きが必要です。 ・紛失や無効化のリスクはあるものの、遺言の存在が公的に証明されるメリットがあります。 ・実務上はあまり用いられず、自筆と公正の中間的な形式とされています。 遺贈を確実に実現したい場合は、公正証書遺言の作成が最も推奨されます。

2. 受遺者の確認と受け入れ意思の確認

遺贈を予定する相手が、その財産を受け入れる意思があるかどうかを確認しておくことも重要です。特に法人や団体、自治体などを受遺者に指定する場合、受け入れ体制や内部規程の確認が必要になるケースがあります。 たとえば、老朽化した不動産や維持コストのかかる資産などを遺贈された場合、受遺者側が受け取りを辞退することも可能です。特定遺贈であれば、書面等で意思を明確に示すことで受け取りを拒否できます。包括遺贈の場合は、家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。

3. 遺言の執行

被相続人が亡くなった後、遺言書が開封され、その内容に基づいて手続きが進められます。この段階で登場するのが「遺言執行者」です。 遺言執行者は、遺言の内容を実現する責任者であり、遺言書で指定されるか、家庭裁判所によって選任されます。 執行者は以下のような業務を担います ・財産目録の作成 ・不動産・預貯金等の名義変更 ・税金の申告と納付 ・必要書類の取得と提出 法律や税務の専門知識が求められるため、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることが多いです。 スムーズな執行のためにも、遺言書の段階で信頼できる人物または専門家を遺言執行者に指名しておくことが推奨されます。

4. 財産の引き渡しと名義変更

遺言の内容に基づいて、遺贈対象となる財産の引き渡しと名義変更の手続きが行われます。財産の種類によって具体的な手続きは異なります ・不動産の場合:法務局で所有権移転登記を行う必要があります。必要書類には、遺言書の写し、遺言執行者の選任証明、印鑑証明書などが含まれます。 ・預貯金の場合:金融機関にて、遺言書や戸籍謄本、受遺者の本人確認書類を提出し、名義変更または払い戻しの手続きをします。 ・株式や有価証券の場合:証券会社または株主名簿管理人の手続きに従い、名義の変更を行います。 これらの手続きが完了した時点で、遺贈が正式に成立します。あわせて、相続税の申告や納付、登録免許税などの税金・手数料も発生するため、専門家の助けを借りて対応するのが一般的です。

遺贈を受け取れるのは誰か? 受け取りを拒否することは可能か?

遺贈は、基本的に相続人・非相続人を問わず、個人・法人を含めて誰に対しても指定が可能です。被相続人が遺言書において明確に意思を示していれば、その対象が親族であろうと赤の他人であろうと、あるいはNPO法人や自治体であろうと、遺贈の指定は有効です。 特に近年では、社会的な活動を行っている公益団体や教育・福祉機関などへの遺贈寄付が増えており、個人以外の法人等への遺贈も現実的な選択肢として定着しつつあります。 一方で、遺贈を受け取る側には、その受け取りを拒否する権利があります。遺贈は強制ではなく、あくまで受遺者(遺贈される人・団体)の意思によって成立します。拒否する際は、明確な拒絶の意思表示が必要で、相続開始後(被相続人の死亡後)に書面等でその意志を示せば、原則として有効です。 受け取りを拒否する主な理由としては: ・対象財産に債務や管理責任が伴う(例:老朽化した不動産) ・組織としてのポリシーや運営方針にそぐわない ・税務上または法務上のリスクがある ・寄付の目的が明確でない、または調整が困難 などが挙げられます。 なお、包括遺贈を受けた場合には、債務も引き継ぐことになるため、特に注意が必要です。この場合には、相続人と同様に家庭裁判所への「相続放棄」の申述によって拒否の手続きを行うことになります。特定遺贈の場合には、特別な手続きは不要で、書面での拒否意思の通知で足ります。

遺贈にかかる税金と相続税の基本

遺贈した場合、税金がかかるのは誰か?

まず大前提として、遺贈において税金を支払う義務があるのは、財産を「受け取った側」です。つまり、遺言により財産を譲り受けた個人または法人が納税者となります。 ・遺贈を行った被相続人には税金の負担は発生しません。 ・財産を譲り受けた個人・団体が相続税の申告と納付を行う義務を負います。 この点は、贈与と決定的に異なる部分です。贈与では、贈与された側が贈与税を負担しますが、遺贈では相続税が適用され、贈与税は課税されません。

遺贈には贈与税ではなく、相続税がかかる理由

遺贈は被相続人の死亡によって効力が生じるため、民法上も税法上も「相続」として扱われます。そのため、仮に遺贈された相手が法定相続人でなくても、相続税の枠組みで課税されるという点が重要です。 一方、生前に行われた贈与には贈与税が課されます。これは財産の移転時期が「生前」であるか「死亡後」であるかの違いによって、税の扱いが分かれるという考え方に基づいています。

相続税以外でかかる可能性がある税金

遺贈によって取得した財産には、相続税以外にも各種の税や手数料が発生する場合があります。特に注意すべきものを以下にまとめます。 ・登録免許税 不動産を遺贈された場合に発生 登録免許税率は通常0.4%だが、法人に遺贈する場合は2.0%となることも ・不動産取得税 特定の条件を満たさない場合、不動産取得税が課税される可能性あり ・印紙税 不動産や金銭債権などの移転契約書を作成する場合に課税されることがある こうした税金・手数料は、財産の評価額や遺贈の内容、受け手の属性によって異なるため、事前に税理士や司法書士など専門家に確認することが望まれます。

遺贈で取得した財産の相続税の計算方法

相続税は、受け取った財産の評価額に基づいて計算されます。評価は、財産の種類ごとに異なるルールが存在します。 主な財産の評価方法 ・現金・預貯金:額面通り ・上場株式:相続開始日またはその前後の数日間の終値等に基づいて計算 ・不動産: 宅地:路線価または倍率方式により評価 建物:固定資産税評価額を参考に評価 非上場株式や営業権など:原則として財産評価基本通達に基づく ・取得した財産の評価額が確定したら、以下のステップで課税額を算出します。 相続税の計算ステップ 1.課税価格の合計を算出 遺贈で受け取った財産すべての評価額を合計します。 2.基礎控除額を差し引く 基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) ※遺贈であっても、控除額の計算には法定相続人の数が使われます。 3.税率と控除額に基づいて相続税額を算出 以下の速算表をもとに、課税価格に応じた税率・控除額を用いて税額を計算します。

課税価格(取得金額)税率控除額
1,000万円以下10%0円
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

計算例: 課税価格が6,000万円の場合 → 税率:30%、控除額:700万円 → 相続税額 = 6,000万円 × 30% − 700万円 = 1,100万円 必要に応じて控除や軽減措置を適用  配偶者控除や未成年者控除、小規模宅地の特例などがある場合は、最終税額から差し引きます。 相続人以外が遺贈された場合の計算方法 ここで注意すべきは、「法定相続人以外」が遺贈を受けた場合、相続税額に20%の加算が行われるという点です。これは「相続税の2割加算」と呼ばれ、以下のようなケースに適用されます。 2割加算の対象 ・被相続人の配偶者・子・父母・孫以外の個人 ・被相続人の兄弟姉妹、甥・姪、友人、恋人など ・公益法人や自治体等は対象外(別の非課税措置がある) この制度は、法定相続人とそれ以外の人との間で、相続税負担に差を設けることで公平性を担保しようとする意図に基づいています。

遺贈寄付の種類と進め方

「遺贈寄付」とは、遺言によって財産の全部または一部を、特定の公益団体や自治体、学校、医療機関などに寄付する行為を指します。これは、相続財産を社会に還元し、亡くなった後も自分の意思を反映させる方法として、特に近年注目を集めています。 相続や遺言の枠を超えて多様な手法が可能になっており、財産の性質や寄付先、実現したい社会的目的に応じて適した方法を選ぶことが重要です。

遺贈寄付の種類

遺贈寄付には、以下のように複数の形態があります。それぞれ、法的性質や実務上の取り扱いが異なるため、事前の理解と適切な手続きが不可欠です。 1. 遺言による寄付(遺贈) 最も一般的な方法で、遺言書に寄付先や寄付する財産を明記することで実現します。遺言書が法的に有効であり、内容が明確であることが前提となります。財産の全部または一部を特定の公益法人等に寄付することができます。 ※この形式による寄付は、相続税法上、相続税が非課税となる特例の対象となることがあります。 2. 相続寄付(相続人の意思による寄付) 相続人が、相続によって取得した財産の一部を、後から自らの意思で寄付する形式です。被相続人の遺言ではなく、相続人自身の判断によって寄付するため、原則として相続税を支払った後に寄付が行われます。 税制上の優遇は受けづらく、控除対象となるケースは限定的です。 3. 死因贈与契約による寄付 これは、契約によって贈与を約束する方式です。贈与者と受贈者が生前に合意し、「死亡したときに財産を譲渡する」という契約内容を交わしておくことで、遺言書とは別の形で寄付を実現します。 遺贈とは異なり「契約」であるため、遺言のような遺言能力や証人の要件はありませんが、契約書の存在が必須であり、後日のトラブル防止のためにも公正証書での作成が推奨されます。 この方式でも、受け取った側には相続税が課される点は遺贈と共通です。 4. 生命保険・信託を活用した寄付 生命保険や信託を活用して、死亡保険金や信託財産を特定の団体に渡す仕組みです。例えば、「保険金の受取人に〇〇財団を指定する」といった形です。 保険契約や信託契約によって取り決めるため、相続財産とは区別される場合が多く、寄付先が法人等であれば非課税扱いとなるケースもあります。 ただし、契約内容や使い方によっては課税対象になる場合もあるため、専門家による事前確認が重要です。

遺贈寄付が行われた場合の相続税の取り扱い

遺贈寄付に関する相続税の取り扱いは、「誰の意思で寄付が行われたか」によって、以下のように異なります。 【1】被相続人の意思で寄付された場合(遺言・死因贈与契約等) ・相続税は課税されない(非課税) ・寄付先が国・地方自治体・公益法人などの「特定公益増進法人」であることが条件 ・寄付を受けた側も、法人税の課税対象にならない ・財産を受け取る「相続人」が他にいる場合は、 → 寄付分を控除した残りの財産について相続税を計算 ただし、同族会社などへの寄付は、法人税の課税対象になることがあるため注意 【2】相続人の意思で寄付された場合(相続寄付) ・一度相続人が財産を取得した上で寄付を行う形式 ・原則として、相続税は課税される ただし、以下の条件をすべて満たす場合は非課税の特例(租税特別措置法第70条1項)が適用される:  【非課税の要件】 ・寄付先が国、地方自治体、特定公益増進法人であること ・相続税の申告期限(原則10か月)以内に寄付が完了していること ・相続税の申告書に寄付内容を記載し、証明書類を添付していること この特例は、生命保険金や退職金等の「みなし相続財産」にも適用される このように、寄付の意思決定者が被相続人か相続人かで、税制上の扱いに大きな違いが生じます。特例の適用を受けるためには、事前の計画と適切な手続きが極めて重要です。

遺贈寄付を行うメリット

遺贈寄付は、財産の有効活用というだけでなく、精神的・社会的な意義を含んだ選択肢です。 ・社会貢献ができる 自分の築いた財産を、福祉・教育・医療・環境保護などに役立てることができる。 ・自分の価値観を未来に残せる 人生で大切にしてきた理念や活動を、死後も支援し続けることができる。 ・相続人がいない場合の選択肢となる 法定相続人がいない場合、遺贈寄付により財産の使い道を自分で決めることが可能。 ・節税につながる場合がある 条件を満たせば、相続税・法人税が非課税となるため、相続人や受遺者の負担軽減にもつながる。

遺贈寄付する手続きの流れ

現金・預貯金を遺贈寄付する場合、寄付先が公的機関であっても民間の公益団体であっても、基本的な手続きの流れは共通しています。以下に、一般的な5つのステップをご紹介します。 1. 法定相続人と相談 遺贈寄付の方針を、あらかじめ家族や相続人に説明し、トラブルの未然防止を図る 2. 寄付先と事前に相談 団体によっては、使途を指定した「指定寄付」が可能な場合もあるため、目的・受け入れ体制の確認を行う 3. 遺言執行者の選任 死後の手続きを確実に行うために、信頼できる専門家や第三者を遺言執行者として指定 4. 遺言書を作成し、保管 ・「〇〇団体に〇〇円を寄付する」といった具体的記載が必要 ・公正証書遺言の作成が推奨される ・作成後は、公証役場や信頼できる第三者に保管を依頼 5. 死後、遺言執行者によって寄付を実行 銀行で相続手続きを行い、遺言に基づいて現金を振込 寄付完了後、受領証明書を取得し、相続税の申告資料として活用

公的機関への金銭寄付で注意すべき点

・金銭寄付は不動産などと異なり、受け入れやすく非課税の適用も確実性が高い ・使途指定がある場合は、寄付先と合意の上で明文化する ・相続税の申告期限(10か月)内に寄付が完了していないと非課税対象とならない ・金融機関の手続きや証明書取得には時間がかかるため、早期の準備が重要 ・税務手続きは複雑な場合があるため、税理士や専門家への相談を推奨 ・遺言書の記載が曖昧・不備があると寄付が実行できず、非課税も適用されない

公的機関への遺贈寄付と相続税の非課税制度

遺贈寄付の中でも、国や地方自治体、学校法人、NPO法人、公益法人といった公的機関に対して「お金(現金・預貯金)」を寄付する場合は、社会的な意義も大きく、税制面でのメリットが大きいのが特徴です。 不動産や有価証券などと違い、金銭の寄付は受け入れやすく、手続きも比較的スムーズであることから、多くの人が終活の一環として選んでいます。

公益法人等に現金を遺贈した場合、相続税は非課税

以下のような団体に対して、現金・預貯金を遺贈した場合、その財産には相続税が課税されません。 【非課税となる寄付先の例】 ・国や地方公共団体(市区町村、都道府県など) ・自治体(公営施設、公的プロジェクト等) ・学校法人(大学・専門学校などの教育機関) ・NPO法人(福祉・環境・教育など公益活動を行う認定団体) ・公益法人(公益財団法人、公益社団法人など) これらは「特定の公益法人等」として定義されており、相続税法第12条により、相続や遺贈によって取得した金銭は、相続税の課税対象から除外されます。

相続税が非課税になるための要件

非課税の特例が適用されるためには、以下のすべてを満たす必要があります ・被相続人の意思による寄付(遺言または死因贈与契約) ・寄付先が「特定公益増進法人等」に該当すること ・相続税の申告期限(原則10か月以内)までに寄付が完了していること ・相続税の申告書に、以下の添付書類を提出すること  ・寄付先からの受領証明書(寄付財産の明細、使用目的など)  ・公益法人・学校法人であることを示す登記事項証明書等  ・認定NPO法人であることの証明(該当する場合)

非課税特例が適用されないケース(注意)

以下のような場合には、相続税の非課税措置が無効になる可能性があります ・寄付を受けた団体が2年以内に公益法人またはNPO法人の資格を失った場合 ・寄付財産が公益目的以外に使用された場合 ・寄付を通じて寄付者またはその親族が特別な利益を受けると判断された場合 ・相続税・贈与税の不当な減少が目的と認定されるケース このようなリスクを回避するためにも、寄付先の選定・契約内容の確認・寄付実行後のフォローアップが重要になります。

まとめ

遺贈による寄付は、人生の最終段階で社会に貢献できる有効な手段です。特に現金を公的機関へ寄付する場合は、相続税の非課税特例が適用されるなどのメリットがあり、実務的にも実現しやすい方法です。遺言の作成や寄付先との事前相談、必要書類の準備をしっかり行えば、確実に想いを実現できます。専門家のサポートを活用し、安心して取り組むことが大切です。

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