終活サポート ワンモア今井代表に聞いた|終活の意識変化と今後。一歩を踏み出すためのアドバイス

2024.10.18

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目次

はじめに

終活に関係する民間団体は国内でも多くありますが、実際に話を聞いたことがある人は実は少ないのではないかと思います。今回はミドル世代をはじめ幅広い世代の方を対象にご活動されている終活サポートワンモアの代表、今井様(=代表 今井、以下同)にインタビューをさせていただきました。 終活支援という活動について少しでも参考になれば幸いです。

プロフィール

今井代表写真

紹介:今井 賢司 終活サポート ワンモア 主宰 兼 栃木支部長。立教大学卒。終活カウンセラー1級。写真家として生前遺影やビデオレター、デジタル終活の普及に努める傍ら、終活カウンセラーとして終活相談及びエンディングノート作成支援に注力しています。 また、「ミドル世代からのとちぎ終活倶楽部」と題し「遺言」「相続」「資産形成」といった終活講座から「ウォーキング」「薬膳」「写経」「脳トレ」「筋トレ」「コグニサイズ」などのカルチャー教室、「生前遺影撮影会」「山歩き」「キャンプ」といったイベントまで幅広いテーマの講座を企画開催。 こころ豊かなシニアライフとコミュニティ作りを大切に、終活支援に取り組んでいます。

—ご紹介もかねて、改めて終活サポートワンモア様の活動についてお教えいただけますか?

現在は異業種協業による終活支援のワンストップサービスエンディングノート作成サポートを通じた終活相談終活講座・カルチャー講座開催による情報発信及び啓発活動の3つを主軸に行っています。 私はもともと写真館を経営するフォトグラファーです。年間で40~50件近くの遺影制作のご依頼があり、生前遺影の普及の必要性を感じ、終活に関心を持ったのがそもそものきっかけです。 その後、遺影写真の普及啓発に努めるなかで、数十年の人生を全うした末に、たった一枚の遺影写真も残っていないこと、その背景にはより深刻な問題が潜んでいると感じ、異業種協業による終活支援サービスを展開することにしました。

—ありがとうございます。個人的な感覚ではここ数年で高齢化や終活についてよく騒がれるようになったと思いますが、今井様のご感覚を伺ってもよろしいでしょうか?

設立当初に比べ「終活」自体は一般的に普及・認知されるようになっていると思います。終活がタブーではなくなってきているという手応えを感じています。2018年の民法大改正で大きく取り上げられたのも良かったと思います。 また、コロナ禍を通じて自身の人生やルーツに向き合うといった時間をもつ機会が多くあったと思います。私の経営する写真館にも両親や祖父母の遺影写真の修復・作り直しといったご依頼が多くありました。死をタブー化してきた現代社会にとって、コロナ禍は大きなパラダイムシフト(=価値観の劇的な変化)になっていたと思います。 一方で、「終活」というパワーワードは高齢化社会に大きな問題提起をすることに貢献してきましたが、その反面「わかったつもりの人」を大勢生み出していると思います。私たちは「終活とはミドル・シニア世代が最期まで自分らしく素敵に生きるためのライフプランニングである」と考えていますが、終活イコール「死に支度」のように短絡的にとらえている方が現状では大多数です。 また、情報過多の環境でSNSやセミナーのなかでも間違った知識を教え合うといった光景をみかける機会が増えています。例えば「身内が亡くなったら銀行には隠しておいたほうが良い」といった、自身の体験や感覚、専門家ではない知人から見聞きしたことが情報として発信されているのですが、終活の問題は法律に関することも沢山存在し、相続トラブルや重大な法令違反となることもあり得ます。 また、法令以外でも終末医療など生命の尊厳に関わる問題については最大公約数的な正解は存在しません。各人が、周囲の大切な人たちとともに考えるべきことで、それもまた「終活」なのですが、広く情報収集し熟考するというよりも自身の体験や感覚、バイアスの影響を強く受けていると感じています。

—今井様がこの状況において意識されていることはありますか?

終活というブラックボックスの中身を開示して、具体的になにをすべきかという「みえる化」と、情報を共有できるコミュニティづくりが必要です。 私は終活講座の中でよく「“終活”ってなんですか?」と受講生に問いかけますが、明確に答えられる方はほとんどいらっしゃらないです。 「なんだかよくわからないけれど、終活はしないといけない」と思っている… そういった方がほとんどです。でも、終活って何なのかわかっていないのに、終活を進めるなんてできないですよね? さらに、終活はしないといけないと思っているのは全体の10~20%くらいで、あとは「まあ、なんとかなるだろう」と思っていると思います。しかし、個人の権利意識が強まり、家督制度が失われてゆく背景と、少子高齢化が進む一方といった現状において、「なんとかなる」は通用しません。 終活は、自分の亡くなったあとのことだけでなく、自分の生前(老後)のことも重要なテーマです。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を患うと予測されており、誰がなってもおかしくない状況です。自身の老後をみつめることは避けて通れないのです。 また、財産の処分や介護・終末医療などすぐに答えの出ない難問も山積しています。自分一人で抱えこむのではなく、周囲のサポートと理解を得ながら取り組むことも大切です。 そのためにも、若いうちから終活に関心を持ち、両親やきょうだい、友人とともに取り組んで頂くことを推奨しています。そのために、「ミドル世代からの終活支援」ということを提唱し、法律やおカネの話がメインになりがちな終活講座と併せ、ウォーキングや薬膳、写経体験といったカルチャー教室やキャンプ・山登りといった野外活動まで広く活動を展開しています。小さなコミュニティを複数創出し、草の根活動を通じて終活の普及啓発に取り組んでいるという状況です。 私自身も終活を通して出会う人達と一緒に齢を重ねながら、自身の終活もみつめつつ、ライフワークとして取り組んでいく必要があると感じています。

—セミナーに参加される方の年齢にも変化はありましたか?

ミドル世代の関心が高まっていると感じています。以前は「ミドル世代からの」「シニア向け」といったように世代を分けて告知集客していましたが、最近は対象を限定せずに募集することが多くなりました。 全体に65~75歳代が多く、次いで75~80歳、45~60歳の方も増えています。ミドル世代は親御さんの終活を不安視している傾向が強いですが、ご自身の終活を早期に準備したいといった方も増えています。おひとりさま・おふたりさまが割合的に多いことも背景にあると思います。 講座の中で簡単なワークショップや話し合いの機会をなるべくつくるよう心がけていますが、幅広い世代が同席しているとそれぞれの立場や本音が聞き出され、相互によい影響を与え合っているように思います。

—ありがとうございます。意見交換によって新しい気付きを得ることも多いのですね。

終活に関する意識の変化についてもう少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか?

長寿化をネガティブなイメージで捉える傾向が年々強まっていると感じています。介護や終末医療、葬儀やお墓についても、家族に迷惑をかけたくないという想いから「何もしてくれなくていい」といった声をよく聞くようになりました。親と同世代の方々から「長生きしたくない」なんて言われると、何とも言えない切ない気持ちになります。

—難しい質問かもしれませんが、それはなぜだと分析されますか?

年金・社会保険や雇用、医療介護と高齢化社会が「社会問題」として取り上げられる場面が多く、世代間の溝も深まっていること、加えて日本的な忖度文化が根づいていることが背景にあると思います。 終活支援やシニア向けの施策が専らシニア世代の優遇だと考えるのは短絡的だと私は考えています。もちろん、バランスを考えて改めるべきところもあるとは承知していますが、世界に例のない高齢化が進む中でシニア支援策を試行錯誤することは、いまの若者世代が迎える老後のロールモデルとなるものです。「年寄り笑うな行く道だもの」…終活本の先駆け『大往生』(永六輔 著)に紹介されていましたね。 自分自身の幸せを願う気持ちは誰でも持って良いものであり、世代を超えた相互理解の扶け(たすけ)となるといったことも使命として取り組んでいます。

—ありがとうございます。ここからは今後終活を始められる方へ向けて、いくつかお聞かせください。まず、終活について早めに始めるべきかという議論について、正直いろいろな意見があるかと思います。

終活を早めに始めるメリットについてお教えいただけますでしょうか?

選択肢が増えるということが最大のメリットです。例えば老後資金の運用を老後に差し掛かってから始めてもできることは限られてしまいます。また、高齢になって心身が弱ってからでは余裕をもって正しい判断や行動がとれなくなる傾向が強いです。 早いうちに老後を見据えて準備を始めることで、ゆとりをもって取り組むことができ、しっかりと考えながら自身の人生と向き合うことができると思います。 また、人生は様々なリスクで満ちており、交通事故や突発的な難病、災害はじめ社会情勢の激変など、若い世代もいつどのような困難に差し掛かるかわかりません。遺言書の作成率が50%(我が国では10%未満)と言われる米国では、10~20代から遺言書を準備するのが当たり前と言います。日本のように「阿吽の呼吸」で物事の解決を図ろうとする文化も素敵だと個人的には思っていますが、自己防衛や権利意識の啓発は必要だと思っています。

—今井様のご感覚として、終活を考え始めるきっかけとして多い出来事を教えていただけますか?

私の講座にいらっしゃる方は身内の看取りを経験された方が多いです。それから、盆正月や法事のように親族が集まる機会もきっかけになっているようです。65歳や70歳といった区切りの良い年齢を迎えたことも背中押しになっているようです。テレビや新聞雑誌の特集をみたといったこともきっかけになると思います。きっかけはたくさんあると思います。大切なのは、すぐに行動に移すことですね。

—例えば終活の第一歩として、はじめて終活に取り組む人は、最初にどんなことをすべきでしょうか?

最初に取り組んで頂きたいのは「人生の棚卸し」です。これまでの過去を振り返り、大切な想い出やお世話になった人々を思い返して人生と向き合って頂きたいのです。 もちろん、人生を振り返ったときに何かしらの後悔や嫌な思い出が想起されるのは誰にでもあることで、それは「人生の棚卸し」とは違うものです。自分が出会えて良かったと思える人や出来事、それらが私たちを形成しています。それを見つめ直すのが「人生の棚卸し」です。そのことで自分の現在地を確認し、今後を見据え、より自分らしく、そしてより良い人生を歩むことができるように考えることができます。 そのうえで「エンディングノート」を準備して欲しいと思います。エンディングノートには皆さんの終活に必要な項目がすべて網羅されています。コンパクトであまり厚くないものが良いと思います。厚いと挫折してしまいますし、いざというときにどこに何が書いてあるか把握しにくいからです。 ただし、薄くても(1)自分の老後(生前)のこと(2)自分の死後に必要になること の双方の項目があるノートを選んでください。終活の主役は皆さんですから、(2)だけではダメなのです。 (1)のなかで先にお話した「人生の棚卸し」のほか、「これから取り組みたいこと」といった皆さんの今後を考える項目と向き合ってください。

—エンディングノートでもちょっと、という人へ向けてのおすすめはございますか?

「これからやってみたいこと」を紙に書き出してみることをオススメします。私の講座ではよくワークショップとして開催していますが、大変盛り上がります。若い頃からの夢、仕事や育児に追われてできなかったこと、色々あると思います。大きな夢や願い事だけでなく、久しぶりに会っておきたい人など、自由に出してみてください。「家族でカラオケに行きたい」など、コロナ禍でできなかったこともあるんじゃないでしょうか。 それらを紙に書き出して優先順位で並べてみれば、これから皆さんがどんな風に過ごしていきたいか、明確になると思います。ワークショップでは一歩進めて、それを日々の行動計画に落とし込んだり、互いに発表し合ったりしています。周囲の人と共有できれば、さらによい取り組みになると思いますよ。

—終活の普及における課題と、今後の今井様のご活動についてお教えいただけますでしょうか。

終活をより広める上で、一番の課題は、「わかったつもり」の思考停止「まあなんとかなるだろう」という根拠のないバイアスだと考えています。 それらを変えるにはやはり少しでも終活についての異なる意見・価値観や最新の情報に触れてもらうのが大切だと考えています。また、同時に終活支援に取り組んできたなかで今日的で新たな課題も色々とみえてきましたので、 今後は、おひとりさま・おふたりさまの終活支援、シニアの就労支援、(終活での)男女共同参画支援、終活関連ツアーの開催、終活カフェ、シニアのど自慢など、周囲と多く関わるイベントや活動に力を入れていきたいと考えています

—最後に、終活への一歩を踏み出せない人へのアドバイスをお願いいたします。

一度きりの人生です。最期まで活き活きと暮らせるよう取り組んで欲しいと思います。なんとなく不安を抱えていたままでは、日々を楽しく過ごすことなんてできないと思うのです。 人生は終わりのない旅、そしてその旅は一方通行で後戻りはできません。日々を大切に生きるためには、きちんと人生設計をすることが大切で、それが「終活」です。 うまく継続できない方、継続できない事情は人それぞれと思いますのでヒアリングからのスタートになると思いますが、そういった個別事情を除けば、継続できないことを恥じることはないと思います。実は、私は過去に何度も禁煙に失敗しましたが、最終的に成功すれば、失敗した過程などどうでもよくなるものです。 そのうえで、継続できるか自信のない方へのアドバイスとしては、

(1)小さなことから始める

大切な書類を整理する、思い出の写真を整理する、など、自分が無理なくできる範囲から取り組むことが大切です。目標を細かく設定し、達成感を味わうことでモチベーションを維持することも有効です。

(2)誰かに相談する

ひとりで悩まず、家族や友人、専門家などに相談してみましょう。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがありますし、具体的なアドバイスをもらえるかもしれません。

(3)無理のないペースで取り組む

無理をしてしまうと続かなくなってしまいます。体調や気分に合わせて、ペースを調整することが大切です。

といったことをお勧めします。 終活は人生の重要テーマであり、人それぞれに考え方も状況も異なります。大切なのは、焦らず、無理せず、自分にあったペースで進めることです。 もし、一人で悩んでいるのであれば、誰かに相談したり、専門家のサポートを受けたりすることをおすすめします。情報やサポートを得て考えると、ものの見方や考え方が大きく変わると思います。

終わりに

いかがでしたでしょうか?終活についてなかなか一歩を踏み出せない方にとって、こちらのアドバイスが少しでも役に立てば幸いです。私たち終活相続ナビでも終活をはじめとするお悩みの相談を受け付けております。フォームでも電話でもお気兼ねなくご連絡ください。

終活サポートワンモア様 HP

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