お盆に行う棚経とはなに?相場や不要な場合の断り方まで徹底解説

2025.3.21

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目次

お盆の時期になると、「棚経(たなぎょう)」をお坊さんにお願いする家庭も多いでしょう。しかし、「そもそも棚経とは?」「断ることはできるの?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。 本記事では、棚経の意味や由来、行う期間、お布施の相場、断り方のマナーなどを詳しく解説します。初めて棚経を受ける方も安心できるよう、準備や注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

そもそも棚経ってなに?

棚経(たなぎょう) とは、お盆の期間にお坊さんが各家庭を訪れ、仏壇や精霊棚の前でお経をあげる法要のことです。これは、先祖の霊を供養し、お迎えするための大切な仏教行事 の一つとされています。 棚経は、お盆に家族が集まり、亡くなった方々の霊を迎え入れ、感謝の気持ちを込めて供養する意味合いがあります。多くの家庭では、檀家(だんか)としてお寺と関係を持っている場合、お坊さんが事前にスケジュールを調整して訪問し、読経を行います。

棚経の基本的な流れ

1.お坊さんが訪問 し、仏壇や精霊棚の前で読経を始める。 2.家族が焼香をしながら、手を合わせて供養する。 3.読経が終わると、お坊さんにお布施を渡し、見送る。 このように、棚経はお盆の時期に行われる仏教行事の一つであり、家族が集まり、亡き人を偲ぶ重要な機会となっています。

棚経の基本的な流れ

棚経は、仏壇に向けて読経を行うことで、先祖の霊が安らかに過ごし、成仏することを願う儀式です。お盆期間中、僧侶が多くの家を回り、仏壇の前で短い読経を行い、家族と共に供養します。この儀式は、先祖供養と共に、家族が集まり、先祖への感謝と祈りを新たにする大切な機会でもあります。

棚経の由来

棚経の起源は、お釈迦様の弟子である「目連尊者(もくれんそんじゃ)」の逸話 に基づいています。この話は、仏教の経典に記されているもので、お盆のルーツとも深く関係している と言われています。

目連尊者と餓鬼道に落ちた母 目連尊者は、お釈迦様の高弟の一人で、神通力を持つ僧侶 でした。ある日、亡くなった母親がどこにいるのかを調べたところ、彼女が「餓鬼道(がきどう)」に落ちて、飢えと渇きに苦しんでいる姿を発見しました。 餓鬼道とは、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天)の一つで、生前に欲深い行いや悪行を積んだ者が落ちる世界 です。そこでは、食べ物や飲み物を口にしようとすると、それらが炎に変わり、永遠に飢えと渇きに苦しむとされています。

母を救うための供養が棚経の始まり 目連尊者は母を救おうと食べ物を施しましたが、彼女は食べることができませんでした。困った目連尊者が、お釈迦様に相談すると、次のような教えを受けます。 「七月十五日に、修行僧たちに食事を施し、供養を行いなさい。そうすれば、母は救われるでしょう。」 この教えを実践した結果、目連尊者の母親は餓鬼道から解放され、極楽へ行くことができたとされています。これが、お盆の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の由来 であり、やがて僧侶が家庭を回って供養する「棚経」の習慣へと発展したのです。

日本における棚経の広まり 日本では、平安時代に「お盆」の風習が広まり、仏教と融合しながら進化してきました。特に江戸時代以降、寺院と檀家制度が確立されると、お坊さんが檀家の家を回って読経を行う「棚経」の習慣が定着 しました。 今日でも、多くの家庭でお盆の時期に棚経を受け、ご先祖様を供養する習慣が続いています。

棚経を行う期間は?

棚経は、お盆の期間に合わせて行われるのが一般的ですが、地域や宗派によって異なる ことがあります。特に、お盆の時期は7月と8月のどちらで行うかが地域によって分かれるため、事前に確認することが大切です。

お盆の時期と棚経のスケジュール

お盆の時期は、以下のように大きく2つのパターンに分かれます。

お盆の時期主な地域棚経が行われる期間
7月13日〜16日(新盆)東京・神奈川など関東圏7月上旬〜中旬
8月13日〜16日(旧盆)全国的に広く分布8月上旬〜中旬

都市部では7月、地方では8月に行うことが多いですが、お寺の方針や家庭の事情によって異なることもあります。

お坊さんの棚経のスケジュール

お坊さんは、多くの檀家を回るため、お盆期間の数週間前から棚経を始めることが一般的 です。そのため、実際の棚経の日程は、7月または8月の上旬から始まることが多くなります。 特に人気のあるお寺では、棚経の予約がすぐに埋まるため、早めの確認と依頼が必要 です。

地域ごとの違い

地域によっては、独自のお盆風習があるため、お寺によって棚経の期間が異なる こともあります。例えば、沖縄では旧暦の7月15日に行う「旧盆」が一般的で、本州とは違う時期に棚経が行われる ことがあります。 また、新盆(故人が亡くなって初めて迎えるお盆)の場合は、特別な法要が行われることもある ため、一般のお盆とは異なる対応が必要です。

棚経を受ける場合の準備

棚経の期間が近づいてきたら、次の点を確認しておきましょう。 ・ お寺に確認して、棚経の日程を決める ・仏壇や精霊棚を整えておく ・お布施の準備をしておく 特に、お坊さんの訪問日時は事前に確認しておくことが重要 です。

棚経は断ってもよい?断り方とは?

棚経は、必ず受けなければならないものではありません。お盆の供養方法は家庭の事情や宗派の考え方によって異なるため、棚経を受けるかどうかは自由に決めて問題ありません。

棚経を断ってもよい理由

棚経を断っても良いとされる理由には、以下のようなものがあります。 ・家庭の事情や都合:仕事や旅行などの理由で家を留守にする場合。 ・個別に供養する場合:自宅で家族だけで静かに供養を行いたい場合。 ・経済的な理由:お布施の負担が重いと感じる場合。

断り方のポイント

棚経を断る際は、丁寧かつ誠実に対応すること が大切です。特に、檀家としてお世話になっているお寺の場合、今後のお付き合いにも影響する可能性 があるため、失礼のないように断りましょう。

断り方の例文

・「今年のお盆は家庭の事情により、棚経は遠慮させていただきます。」 ・「今回は家族だけで静かに供養を行いたいと思います。」 ・「事情がありまして、棚経は控えさせていただきますが、お盆のお参りには伺います。」 「また来年お願いしたい」と伝えることで、関係を円満に保つことができます。

断る際の注意点

1.早めに連絡する:棚経の日程はお坊さんが複数の家庭を回るため、スケジュールがタイトです。断る場合は、早めに伝えるのがマナー です。 2.感謝の気持ちを伝える:これまでの供養に対する感謝の気持ちを伝えると、誠実な印象を与える ことができます。 3.電話か直接伝える:メールやメッセージではなく、電話や対面で伝える のが丁寧です。

断った場合の代替供養

棚経を断った場合でも、自宅でできる供養の方法 があります。 ・仏壇にお供えをして、家族だけでお参りをする ・お寺に行って、お盆の法要に参加する ・オンラインでのお参りを利用する(最近では、オンラインで読経を聞けるサービスもあります) 棚経を断ったからといって、供養の気持ちが薄れるわけではありません。家庭に合った供養の方法を選びましょう。

棚経を受ける際に気をつけたいこと

棚経を受ける際には、事前の準備やマナーを守ること が大切です。特に初めて棚経を受ける場合、不安を感じることもあるでしょう。ここでは、棚経をスムーズに進めるために知っておきたい注意点や準備事項 を詳しく解説します。

事前に依頼をしておく

棚経は、お寺側から案内が来る場合 と、自分から依頼する場合 の両方があります。 ・檀家の場合:お寺側から棚経のスケジュールが通知されることが多いです。案内が来たら、希望の日程を早めに伝える ようにしましょう。 ・檀家でない場合:自分からお寺に依頼をします。この場合も、お盆の1ヶ月前には連絡 しておくとスムーズです。

依頼時のポイント

電話で依頼するのが一般的:メールやメッセージよりも、直接電話で依頼するほうが丁寧です。 ・希望の日程を伝える:お坊さんは多くの家庭を回るため、日時の調整が必要 です。複数の候補日を伝えると良いでしょう。 ・新盆の場合は特別な法要が必要:故人が亡くなって初めて迎えるお盆(新盆)の場合、通常のお盆とは異なる法要 が行われることがあります。新盆であることを伝えるのを忘れないようにしましょう。

基本的に親族で行う

棚経は、家族や親族が集まって行うのが一般的 です。遠方の親族がいる場合は、事前に連絡をして、できるだけ多くの家族が揃うように 調整しましょう。 参加する人のマナー焼香の順番:通常、年長者から行いますが、家族内で事前に決めておくとスムーズです。 ・読経中は静かに:読経中は、私語を慎み、手を合わせて祈る ようにしましょう。 ・子どもがいる場合:長時間じっとしていられないこともあるため、静かに待てるように事前に教えておく か、短時間で終わるように工夫するのも一つの方法です。

棚経を初めて受ける前に確認すべきこと

棚経を初めて受ける場合、わからないことが多く、不安を感じる かもしれません。事前に確認しておくことで、当日スムーズに進行 できます。 確認すべきポイント 1.精霊棚の準備 ・棚経を行う場所には、仏壇または精霊棚 を用意します。 ・精霊棚には、位牌・線香・灯明・供物(果物やお菓子)を供える のが一般的です。 ・地域や宗派によって飾り方が異なるため、お寺に確認しておくと安心 です。 2.当日の流れ ・お坊さんの到着時間と所要時間 を確認しておきます。 ・焼香の順番や作法 について、お坊さんに聞いておくとスムーズです。 3.お布施の準備 ・お布施は事前に準備 しておきましょう。 ・白封筒またはのし袋を使い、水引は「黒白」または「黄白」を選びます。 ・表書きには「お布施」「御経料」と書きます。

棚経の服装とは?礼服を着るべき?

棚経の際の服装には、厳密な決まりはありませんが、落ち着いた装いが推奨されます。特に、初めて棚経を受ける場合や、親族が多く集まる場合は、服装マナーを守ることで、故人に対する敬意を示す ことができます。

棚経の服装の基本ルール

地味で落ち着いた色:黒、紺、グレーなどの控えめな色合いを選びましょう。 ・露出を控えた服装:肌の露出が少ない服を選ぶことで、礼儀を重んじた印象 を与えます。 ・派手な装飾や柄は避ける:無地のもの、または控えめな模様にしましょう。

男性の服装

・黒や紺のシャツ、ポロシャツ、スラックス が基本です。 ・カジュアルすぎないように、Tシャツやジーンズは避ける のが無難です。 ・スーツを着用する必要はありません が、目上の親族が集まる場合は、ジャケットを羽織る とより丁寧な印象を与えます。

女性の服装

・シンプルなワンピースやブラウス、スカート が一般的です。 ・肌の露出を控えるため、袖のある服 や、膝が隠れるスカート を選びましょう。 ・派手なアクセサリーは避け、シンプルなネックレスやイヤリング 程度にとどめるのがマナーです。 ・パンツスタイルでも問題ありませんが、スラックスなどフォーマルなものを選ぶ のが良いでしょう。

子どもの服装

・子どもは大人ほど厳格なルールはありませんが、落ち着いた色合いの服装 を選びましょう。 ・男の子の場合:黒や紺のシャツ、ポロシャツ、スラックス など。 ・女の子の場合:シンプルなワンピースやスカート が無難です。 ・キャラクターものや派手な色の服は避け、清潔感のある服装 を心がけます。

礼服は必要?

棚経では、葬儀ほどの厳格な礼服は必要ありません。 ・喪服やブラックフォーマルは基本的に不要 ですが、初盆(新盆)の場合は、礼服を着ることもあります。 ・地域や家庭によって異なるため、不安な場合は親族に確認する のが確実です。

靴や小物のマナー

・靴は黒や紺のシンプルなもの を選びます。 ・女性の場合、ヒールは低めで派手な装飾のないもの が好ましいです。 ・バッグも、黒や紺の無地のもの が無難です。 ・香水は控えめに しましょう。特に仏教の行事では、強い香りを嫌う場合があります。

棚経の際のお坊さんの迎え方

棚経の際にお坊さんを迎えるときには、丁寧で礼儀正しい対応 を心がけることが大切です。お坊さんは、仏様の教えを伝える役目 を担っているため、敬意を持って接する のがマナーです。

訪問前の準備

お坊さんが訪問する前に、必要な準備を整えておく ことで、スムーズに棚経を進められます。 ・仏壇や精霊棚の掃除:ホコリを払い、清潔な状態にしておく のが基本です。 ・お供え物の準備:果物やお菓子、線香、灯明などを準備します。 ・座布団の用意:お坊さんが座るための座布団を仏壇の前に用意 します。 ・お布施の準備:お布施は事前に白封筒またはのし袋に入れ、名前を記入 しておきます。

お坊さんの迎え方の基本マナー

・お坊さんが到着したら、玄関まで出迎える ようにしましょう。 ・笑顔で挨拶し、「本日はよろしくお願いいたします」 と丁寧に伝えます。 ・靴を脱ぐ際には、お坊さんが履きやすいように靴の向きを揃える のがマナーです。 ・お坊さんの荷物(経本や数珠など)を持とうとするのは、場合によっては失礼になることもあるため、無理に持たない 方が無難です。

仏壇前への案内

・お坊さんを仏壇または精霊棚の前に案内します。 ・通る道が狭い場合は、「どうぞこちらへ」と案内し、先に道を開ける ようにします。 ・仏間に到着したら、「こちらでお願いいたします」 と伝え、お坊さんが座る座布団を指し示します。 ・座布団に座ってから、お坊さんが経本を準備するまで待つ のがマナーです。

読経中の注意点

・読経が始まったら、家族全員が手を合わせて静かに祈ります。 ・私語を慎み、携帯電話は事前にマナーモードに設定 しておきましょう。 ・焼香の順番は、年長者から行う のが一般的ですが、事前に家族内で決めておくとスムーズです。 ・小さな子どもがいる場合は、静かに待てるように事前に教えておく か、別室で待機させるのも一つの方法です。

読経終了後の対応

・読経が終わったら、「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えます。 ・お布施を渡す場合は、両手で丁寧に渡し、「本日はありがとうございました」 と再度お礼を述べます。 ・お坊さんが帰る際は、玄関まで見送り、靴を揃えておく のがマナーです。 ・最後に、「また来年もよろしくお願いいたします」 など、次回に向けた挨拶をして見送ります。

お坊さんが複数家庭を回る場合の配慮

・棚経の時期は、お坊さんが複数の家庭を短時間で回ることが多い ため、無駄話や長時間の引き止めは避ける ようにしましょう。 ・お茶を出す場合も、飲み物のみをサッと出して、長居を促さない のが配慮ある対応です。 ・お坊さんが次の訪問先に遅れないように、スムーズな進行を心がける ことが大切です。

棚経に対するお布施の相場

棚経をお願いした際に渡す「お布施」は、お坊さんへの感謝の気持ちを表すもの です。日本の伝統的な慣習であり、具体的な金額に決まりはありません が、地域やお寺、家庭の状況によって相場が異なります。ここでは、一般的な相場や渡し方、書き方のマナー を詳しく解説します。

お布施の相場

お布施の相場は、3,000円〜10,000円程度 が一般的です。ただし、地域やお寺の規模、新盆(故人が亡くなって初めてのお盆)などの特別な事情によって異なります。

棚経の種類お布施の相場
一般的な棚経3,000円〜5,000円
新盆(初盆)10,000円〜30,000円
特別な法要を伴う場合20,000円〜50,000円

地域ごとの相場の違い

都市部(東京・大阪など):比較的高めで、5,000円〜10,000円 が相場です。 ・地方(地方都市や農村部):3,000円〜5,000円程度が多いです。 ・新盆の場合:他の親族や地域の慣習に合わせて渡すことが多く、10,000円以上 が一般的です。

複数のお坊さんが来る場合

稀に、複数のお坊さんが棚経を行うことがあります。この場合は、人数分のお布施を用意するのがマナー です。例えば、お坊さんが2人なら、それぞれに5,000円ずつ渡すと良いでしょう。

お布施の渡し方

お布施の渡し方には、いくつかのマナーが存在 します。直接手渡しする のが基本ですが、渡すタイミングや作法を守ることが大切です。

渡すタイミング

・棚経が終わった後に渡す のが一般的です。 ・読経の前に渡すこともありますが、お坊さんが準備を整えた後に「どうぞよろしくお願いします」と伝える と自然です。

手渡しの作法

・お布施は、両手で丁寧に渡す のが基本です。 ・「本日はありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」と、感謝の気持ちを伝えながら渡す ようにします。 ・座布団の上に置くのは失礼 とされているため、必ず手渡し しましょう。

お布施の書き方

お布施は、白封筒またはのし袋 に入れて渡します。のし袋の書き方には、宗派に関わらず共通するマナー があるため、正しく書きましょう。

封筒の種類と水引の選び方

・白封筒:シンプルな無地の封筒で問題ありません。 ・のし袋:水引が「黒白」または「黄白」のものを選びます。    *黒白:仏教全般で使用可能    *黄白:浄土真宗でよく使われる

表書きの書き方

・表書きは、毛筆または筆ペン を使って、濃い墨で書く のがマナーです。 ・「お布施」 または 「御経料」 と書きます。 ・新盆の場合は、「御仏前」 と書くこともあります。 ・水引の上部中央 に表書きを書き、下部に自分の名前をフルネームで記入 します。

裏書きの書き方

・封筒の裏面には、住所を記入するのが一般的 です。 ・特に、檀家として長年お世話になっている場合は、お寺での管理がしやすくなる ため、住所を書くのが丁寧です。

お布施の包み方と金額の入れ方

・お布施は、新札ではなく、使い古しの綺麗なお札 を用意するのがマナーです。 ・お札の向きは、肖像画が表面で上になるように揃えて入れます。 ・のし袋に包む際は、中袋を使って入れる とより丁寧な印象を与えます。 ・中袋の表面には金額を漢数字で記入 します。 例:「壱萬円」「伍千円」など

のし袋を使う場合のマナー

・のし袋を使う場合は、袱紗(ふくさ)に包んで持参する のが正式なマナーです。 ・袱紗の色は、紫、紺、グレー など、落ち着いた色を選びます。 ・お坊さんの前で袱紗から取り出し、両手で丁寧に渡します。

宗派ごとの違い

棚経は、日本の仏教における先祖供養の一環 ですが、宗派によって考え方や儀式の内容が異なる のが特徴です。それぞれの宗派の教えや習慣に基づいて、棚経の形式やお経の内容、供養の仕方 が違うため、自分の家の宗派を理解しておくことが大切 です。ここでは、代表的な宗派ごとの棚経の特徴を解説します。

曹洞宗

曹洞宗は、坐禅(ざぜん)を重視する禅宗 の一派で、祖先供養を通じて仏道を修める という考え方が基本です。棚経も、ご先祖様に感謝し、仏道に精進する心を表す 儀式とされています。

特徴とお経の内容

・曹洞宗の棚経では、「般若心経(はんにゃしんぎょう)」 や 「修証義(しゅしょうぎ)」 などが読まれます。 ・特に、「修証義」は、道元禅師の教えをまとめたお経 で、仏道修行の心得を説いています。 ・仏壇の前に加えて、精霊棚の前でも読経 が行われます。

作法と供養の仕方

・曹洞宗では、焼香を3回行う のが一般的です。 ・合掌の際は、親指を中に入れて手を組む のが特徴です。 ・供物は五供(ごく) と呼ばれる「香、花、灯明、水、食べ物」を供えるのが基本です。 ・お布施の表書きには、「お布施」「御経料」 と書くのが一般的です。

浄土真宗

浄土真宗は、阿弥陀如来の救済を信じ、念仏を唱えること を重視する宗派です。他力本願 の教えに基づき、個人の修行や供養よりも、阿弥陀如来への感謝を表す のが特徴です。そのため、他の宗派とは棚経に対する考え方が大きく異なります。

棚経を行わない理由

・浄土真宗では、亡くなった人は極楽浄土へ往生する とされているため、死者供養の必要がない と考えられています。 ・そのため、「棚経」という形の供養は行わない のが基本です。 ・ただし、故人を偲ぶための法要や、仏壇の前でお勤めを行う ことはあります。

代わりに行う法要

・棚経の代わりに、「お内仏(おないぶつ)」 と呼ばれる仏壇の前でのお勤めを行います。 ・「正信偈(しょうしんげ)」 や 「念仏」 を唱え、阿弥陀如来への感謝を表す のが特徴です。 ・お布施の表書きは、「御礼」や「御布施」 と書き、水引は黄白 を使います。

真言宗

真言宗は、空海(弘法大師)によって開かれた密教の一派 で、呪文(マントラ)や印契(いんげい)を用いた独特の儀式 が特徴です。ご先祖様の供養だけでなく、現世の安寧や成仏を祈る 意味合いが強いのが特徴です。

特徴とお経の内容

・真言宗の棚経では、「般若心経」や「観音経」 が読まれることが多いです。 ・また、「光明真言(こうみょうしんごん)」 と呼ばれる独特のマントラ(真言) を唱えるのが特徴です。 ・真言宗の棚経では、印契(手の組み方)を結んで読経 することがあり、他の宗派とは異なる儀式形式 となっています。

作法と供養の仕方

・焼香の回数は1回または3回 です。 ・数珠の持ち方や焼香の順番 に特徴があるため、お坊さんの指示に従う のが無難です。 ・お布施の表書きは、「お布施」「御供養」 が一般的です。 ・水引は黒白または双銀 を使用します。

その他のお盆法要

お盆の期間には、棚経以外にも様々な法要や儀式が行われます。これらの法要は、ご先祖様の霊を迎え入れ、供養し、送り出す ための大切な行事です。特に、地域や宗派によって異なる風習 があるため、それぞれの意味や内容を理解しておくことが大切です。ここでは、代表的なお盆法要である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と「施餓鬼法要(せがきほうよう)」 について詳しく解説します。

盂蘭盆会(うらぼんえ)

盂蘭盆会(うらぼんえ) は、お盆の正式な名称で、亡くなった人の霊を供養するための行事 です。この行事は、お釈迦様の弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)の逸話 に由来しており、ご先祖様の霊を迎え、供養し、送り出す一連の儀式 を指します。

盂蘭盆会の由来

・盂蘭盆会の由来は、目連尊者が亡くなった母親を救うために供養を行った逸話 に基づいています。 ・目連尊者は、神通力を使って亡き母の様子を見たところ、餓鬼道に落ちて苦しんでいる姿を発見 しました。 ・お釈迦様に相談した目連尊者は、七月十五日に僧侶に供物を施して供養を行う ようにと教えられ、これを実践したことで母親は救われたとされています。 ・この逸話がもとになり、ご先祖様の霊を供養する行事として「盂蘭盆会」が生まれ、日本のお盆の風習へと発展しました。

盂蘭盆会の内容

・盂蘭盆会では、仏壇の前やお寺でお坊さんが読経を行い、供養する のが一般的です。 ・家族や親族が集まり、焼香をしてご先祖様を供養 します。 ・仏壇や精霊棚に、果物、花、線香、灯明 などを供えるのが基本です。 ・地域によっては、精霊馬(しょうりょううま) を飾り、ご先祖様の霊が帰ってくる際の乗り物 として迎える風習もあります。 ・お布施の表書きは、「御供物料」や「御布施」 と書くのが一般的です。

施餓鬼法要(せがきほうよう)

施餓鬼法要(せがきほうよう) は、餓鬼道に落ちた霊や、供養されていない無縁仏を救うための特別な供養法要 です。この法要は、仏教の経典『救抜焔口餓鬼陀羅尼経(くばつえんくがきだらにきょう)』 に由来しています。

施餓鬼法要の由来

・『救抜焔口餓鬼陀羅尼経』 によれば、お釈迦様の弟子である阿難尊者(あなんそんじゃ) が、焰口(えんく)という餓鬼から「三日後に命が尽き、餓鬼道に落ちる」と告げられました。 ・阿難尊者がお釈迦様に助けを求めたところ、「餓鬼や困苦の衆生に飲食を施し、仏・法・僧の三宝を供養することで、寿命が延び、餓鬼も救われる」 と教えられました。 ・この教えに従って阿難尊者が供養を行った結果、命が延び、餓鬼たちも救われた とされています。 ・この説話に基づき、餓鬼や無縁仏に施しを行い、救済する法要 として、施餓鬼 が行われるようになりました。

施餓鬼法要の内容

・お寺で「施餓鬼棚(せがきだな)」 と呼ばれる特別な祭壇を設け、水や食べ物を供える のが特徴です。 ・餓鬼や無縁仏を供養するため、「般若心経」や「観音経」 などが読まれます。 ・参列者は、焼香をして無縁仏や餓鬼の霊を供養 します。 ・塔婆(とうば) を立てて供養することもあり、家族や先祖以外のすべての霊を供養する 意味合いがあります。

施餓鬼法要はお盆以外でも行われる

・施餓鬼法要は、お盆の時期に行われることが多い ですが、お盆に限定された法要ではありません。 ・お彼岸や法事、命日など、年間を通じて行われる場合があります。 ・特に、無縁仏や餓鬼道に落ちた霊を供養する ため、特定の時期に縛られずに行うことができる のが特徴です。 ・お寺や宗派によって、年間行事として定期的に施餓鬼法要を行う場合もある ため、地域やお寺の習慣に従って参加する のが良いでしょう。

施餓鬼法要のお布施

・施餓鬼法要に参加する際は、「御供物料」や「御布施」 の表書きでお布施を渡します。 ・お布施の相場は、3,000円〜10,000円 程度ですが、地域やお寺によって異なる ため、事前に確認しておくと安心です。

宗派ごとの違い

・浄土真宗 では、「故人はすぐに成仏する」という教え から、施餓鬼法要を行わないことが一般的です。 ・他の宗派では、無縁仏や餓鬼を供養することで、徳を積み、慈悲の心を育む とされています。

まとめ

棚経は、お盆の期間にお坊さんが家庭を訪れて読経を行い、ご先祖様の霊を供養する大切な仏教行事 です。仏壇や精霊棚の前でお経を唱えることで、亡き人の霊を迎え入れ、感謝の気持ちを伝え、安らかに送り出す という重要な意味を持っています。 日本の仏教文化の中で、棚経は長い歴史を持つ伝統行事 であり、家族や親族が集まって、亡くなった人を偲び、心を一つにして供養する時間 を共有する貴重な機会です。 また、棚経は、故人を敬い、その教えや思い出を次の世代に受け継ぐ場 でもあります。形式にとらわれず、心を込めて供養する ことで、亡き人への想いを深く伝える ことができるのです。

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