遺留分と遺留分侵害額請求を徹底解説!相続トラブルを避けるための実践ガイド

2024.10.21

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1. はじめに

遺産相続において、遺言は被相続人(財産を遺す人)が自らの意思で財産の分配方法を決める重要な手段です。しかし、遺言内容が相続人の期待や法的権利と一致しない場合、相続トラブルが生じることがあります。その際、特に問題となるのが「遺留分」という制度です。 遺留分は、法定相続人が最低限受け取ることを保証されている財産の割合で、遺言の内容にかかわらず相続人の権利を守るために設けられたものです。遺言に従い全財産が特定の相続人や第三者に譲渡される場合でも、法定相続人は遺留分を主張してその取り分を請求することができます。 しかし、遺留分についての理解不足や準備不足が原因で、相続人間の争いや法的紛争が発生することも少なくありません。本記事では、相続における「遺留分」の詳細や「遺留分侵害額請求」の手続きについて詳しく解説し、相続トラブルを未然に防ぐための実務的なポイントも併せて紹介します。

遺言の書き方に関しては、別記事にて詳細に紹介していますので、そちらも併せてご覧ください。

遺言書作成に欠かせないチェックリストをご紹介

2. 遺留分とは?相続人の最低限の権利

2.1 遺留分の概要

遺留分」とは、法定相続人が相続時に受け取ることが保障されている最低限の財産の割合を指します。遺留分の目的は、被相続人が財産を全て第三者に譲るような遺言を残した場合でも、特定の法定相続人の権利を保護することです。これにより、相続人が不当に財産を得られない事態を防ぎます。 遺言によって特定の相続人や第三者に多くの財産が与えられた場合でも、法定相続人は遺留分を主張することで、自分の最低限の取り分を確保できます。

2.2 遺留分が認められる相続人

遺留分を主張できるのは、すべての法定相続人ではなく、特定の範囲に限られます。以下の人々が遺留分を請求できる対象です。 ・配偶者: どのような状況でも配偶者には遺留分が認められています。婚姻関係にあれば、離婚していない限り、その権利は失われません。 ・子供: 被相続人の直系卑属である子供(および孫)は遺留分を請求する権利があります。養子も法的な子供と見なされます。 ・: 被相続人に子供がいない場合、直系尊属である親にも遺留分が認められます。 しかし、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。そのため、兄弟姉妹が唯一の法定相続人である場合、遺言でその全財産を他の人物に譲ることは可能です。

2.3 遺留分の割合

遺留分の割合は、相続人の種類によって異なります。遺留分の総額は、被相続人が遺した財産のうち、相続財産の1/2に相当する部分が保護されます。この遺留分の1/2を、さらに対象となる相続人で分け合うことになります。 例として、被相続人に配偶者と2人の子供がいる場合、相続財産全体の1/2が遺留分となり、配偶者と子供2人でこれを分配する形となります。 相続財産が1,000万円の場合: ・遺留分は1/2である500万円。 ・この500万円を法定相続分に基づいて配偶者と子供が分けます。配偶者は1/2の250万円、子供たちはそれぞれ1/4の125万円ずつが最低限受け取れる額です。 このように、遺留分は被相続人の自由意思で財産を譲る際にも法定相続人の権利を守るために設定されています。

3. 遺留分侵害額請求とは?権利を守るための法的手段

3.1 遺留分侵害額請求の仕組み

遺留分侵害額請求」とは、遺言によって遺留分を侵害された相続人が、その侵害された分の財産を請求するための法的手段です。遺留分侵害額請求を行うことで、相続人は自分の遺留分に相当する金額を他の相続人や受遺者(遺言で財産を受け取る人)から取り戻すことができます。

3.2 遺留分侵害額請求の手続き

遺留分が侵害された場合、相続人は以下の手順で遺留分侵害額請求を進めることが可能です。 1. 話し合いによる解決 まずは、遺留分が侵害された相手方と話し合いを行い、任意で遺留分に相当する額の財産を返還してもらうよう交渉します。相続人同士の話し合いで解決できる場合は、法的手続きを避けることができるため、トラブルを最小限に抑えることが可能です。 2. 家庭裁判所での調停 話し合いで解決が難しい場合、家庭裁判所で調停を申し立てることができます。調停では、第三者である調停委員が間に入って、双方が合意に達するようサポートします。この調停手続きは、訴訟を行う前のステップとして、トラブルの解決に役立ちます。 3. 訴訟による解決 調停でも解決しない場合、最終的には裁判所に訴訟を起こし、法的に遺留分を請求することができます。訴訟では、遺言の内容や遺留分の侵害状況を裁判官が判断し、適正な遺留分が相続人に渡るように命じる判決が下されます。

3.3 遺留分侵害額請求の期限

遺留分侵害額請求には、請求期限が定められています。この期限を過ぎると、遺留分を請求する権利を失ってしまうため、注意が必要です。 ・遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内。 ・被相続人が死亡した日から10年以内。 これらの期限内に遺留分侵害額請求を行わないと、法的に権利を主張できなくなるため、速やかな対応が求められます。

4. 遺留分を考慮した相続対策

4.1 相続トラブルを防ぐために

遺留分をめぐるトラブルを防ぐためには、相続人同士の透明なコミュニケーションと、適切な遺言書の作成が不可欠です。遺言を作成する際には、遺留分に十分に配慮し、法定相続人の権利が侵害されないようにすることが重要です。 例えば、特定の相続人に多くの財産を譲る場合でも、他の相続人が納得できるよう、事前に話し合いを行うことが推奨されます。これにより、相続発生後に生じる争いを未然に防ぐことができます。

4.2 遺言書の作成時に専門家の助言を受ける

遺言書を作成する際には、遺留分に関する法律的な知識を持つ専門家(弁護士や税理士)に相談することが重要です。遺言書が法的に無効とならないよう適切な形式を整えるとともに、遺留分を侵害しない財産の分配方法について助言を受けることで、相続トラブルを防ぐことができます。 特に、複雑な財産構成や家族関係がある場合は、専門家のアドバイスに基づいて相続計画を練り直すことが有効です。

5. まとめ

遺留分は、法定相続人が最低限保証される権利であり、相続における重要な保護制度です。遺言があっても、相続人の遺留分を侵害することはできず、相続人は「遺留分侵害額請求」を通じてその権利を守ることができます。 一方で、遺留分をめぐるトラブルを防ぐためには、被相続人が遺言を作成する際に遺留分を十分に考慮し、専門家のアドバイスを受けながら適切な財産分配を計画することが重要です。また、相続発生後は、早期に対応し、法的手続きを正確に進めることでスムーズな解決が期待できます。 遺留分や遺留分侵害額請求に関する知識を持つことで、相続におけるトラブルを防ぎ、家族間の円満な相続を実現できるでしょう。

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