遺言書を見つけたら何をすべきか?―手続きの流れと注意点を解説

2024.10.21

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相続手続きは、遺族にとって感情的にも実務的にも負担が大きいものです。その中で、被相続人(故人)が残した遺言書は、遺産分割の大きな指針となります。しかし、遺言書を見つけたからといって、すぐにその内容に従って遺産を分割することはできません。遺言書が法的に有効かどうか、また適切な手続きを経ているかを確認する必要があります。 この記事では、遺言書を見つけた際に何をすべきか、その後の手続きの流れを解説します。遺言書の内容を尊重しつつ、適切に相続を進めるための手順を理解しましょう。

1. 遺言書を発見したら、まず最初にすべきこと

遺言書を見つけた場合、最初にやるべきことは慎重な対応です。特に自筆証書遺言秘密証書遺言が見つかった場合、その取扱いには細心の注意が必要です。遺言書は遺産分割の大きな指針となりますが、その内容を実行するには、法的な手続きを適切に進めなければなりません。

(1) 封を勝手に開けない

もし遺言書が封印されている場合、絶対に自分で開封してはいけません。遺言書の開封は、家庭裁判所で行われる「検認手続き」において正式に行われます。相続人が勝手に封を開けてしまうと、5万円以下の過料が科せられる可能性があるだけでなく、遺言書の信頼性が損なわれることもあります。 遺言書が発見された場合は、まずその状態を保ち、速やかに適切な手続きを進めることが重要です。

(2) 遺言書の種類を外観で確認する

遺言書の種類は、封を開けずに封筒や文書の外観から判断できる場合があります。遺言書には、以下の3種類があり、それぞれ手続きが異なります。 ・自筆証書遺言:遺言者が自筆で書いた遺言書です。通常は、遺言者自身が封をしており、封筒には「遺言書」と記載されていることが多いです。これは家庭裁判所での検認が必要です。 ・公正証書遺言:公証役場で公証人によって作成された遺言書です。封をしていないことが多く、遺言書自体に公証人の署名や印が押されています。この遺言書はすでに公証役場で確認済みであり、家庭裁判所での検認は不要です。 ・秘密証書遺言:遺言者が作成した内容を秘匿するために、公証人と証人の前で署名された遺言書です。封印されており、外観には公証人や証人の署名が記載されていることがあります。この遺言書は家庭裁判所での検認が必要です。 封筒や外観にこれらの記載がなく、遺言書の種類が特定できなかった場合には、遺言書を開封せずにそのまま家庭裁判所に持ち込んで確認してもらうのが確実です。

遺言書の種類に関しては、別記事にて詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧ください。

遺言書の内容が不平等だったら?遺言書の仕組みや対処方法を解説

(3) 家庭裁判所への検認手続きを申し立てる

遺言書が自筆証書遺言または秘密証書遺言である場合、相続人や受遺者は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して速やかに「検認手続き」を申し立てる必要があります。この手続きでは、遺言書の内容が改ざんされていないかを確認し、遺産分割を進めるための正確な情報を提供するために行われます。検認手続きが終了するまで、遺言書の内容に従って遺産分割を実行することはできません。

2. 検認手続きとは?その流れを解説

検認は、家庭裁判所が遺言書の内容を確認し、その正当性を確保するための重要な手続きです。ここでは、検認手続きの流れを簡単に説明します。

(1) 検認の申し立て

遺言書を発見した相続人や受遺者は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して検認の申し立てを行います。申し立てには、以下の書類が必要です。 ・遺言書(封がされている場合は開封せずそのまま提出) ・被相続人の戸籍謄本相続人全員の戸籍謄本申立人の住民票

(2) 相続人全員への通知

家庭裁判所に検認の申し立てを行うと、裁判所から相続人全員に検認期日の通知が送られます。この通知は、遺言書が発見されたことを相続人全員に知らせるためのもので、検認手続きに参加するかどうかを判断するための情報が含まれます。相続人全員が検認手続きに参加する必要はありませんが、通知を受け取ることで遺言書の存在を正式に確認することができます。

(3) 検認の実施

検認期日には、家庭裁判所で遺言書の内容が確認されます。遺言書が封印されている場合はその場で開封され、日付や内容、署名や押印などが確認されます。また、検認が終了すると「検認調書」が作成され、この調書が遺産分割の正式な証拠として使用されます。

3. 遺言書の内容に違法性がないか確認する

家庭裁判所の検認手続きは、遺言書の内容が改ざんされていないかを確認するものであり、遺言書の法的有効性や違法性を判断するものではありません。そのため、検認が終わっても、遺言書の内容に問題がないかは相続人自身が確認し、問題がある場合には適切な対応を取る必要があります。

(1) 違法性や無効の可能性がある場合の対応

遺言書が法律に反している場合や、相続人の権利を侵害している場合は、以下のような対応が必要です。 ・遺留分侵害請求:遺言書の内容が特定の相続人に不公平に偏っている場合、法定相続人は「遺留分侵害請求」を行い、最低限の取り分を求めることができます。遺留分は、兄弟姉妹を除く法定相続人に保障されており、特定の相続人や第三者に遺産が多く分配された場合でも、遺留分を請求することが可能です。 ・遺言書無効確認訴訟:遺言書が無効であると考えられる場合(例えば、遺言者が判断能力を失っていた時期に作成された、または遺言書の形式に欠陥があるなど)、相続人は「遺言書無効確認訴訟」を家庭裁判所に申し立てることができます。

遺留分については、別記事にて詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧ください。

遺留分と遺留分侵害額請求を徹底解説!相続トラブルを避けるための実践ガイド

(2) 専門家に相談する

遺言書の内容に不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。専門家は遺言書の内容に法的問題がないかを確認し、必要な手続きについてアドバイスを提供します。特に相続が複雑な場合や、相続人間での争いが予想される場合には、早期に専門家の助けを借りることがトラブルを避けるポイントです。

4. 遺産分割協議や実際の手続き

検認手続きが完了した後は、遺言書の内容に従って遺産分割を行いますが、遺言書の内容に不備がある場合や、相続人間で合意が得られない場合には、遺産分割協議が必要になります。

(1) 遺産分割協議の実施

遺言書の内容が不明瞭だったり、法的に無効とされる部分があった場合や、遺言書に記載されていない財産が発見された場合には、相続人全員で話し合い、遺産をどう分割するかを決定する遺産分割協議を行います。この協議では、相続人全員が合意した内容に基づいて財産を分割するため、全員の署名・押印が必要です。

(2) 遺産分割の手続き

遺産分割協議や遺留分の問題が解決した後、最終的に遺産を実際に分割する手続きに進みます。遺言書に従って、預金口座の解約、土地や建物の名義変更などを行い、相続人がそれぞれの権利に基づいて財産を取得します。この際、相続税の申告や納付が必要になる場合もあるため、税務署への手続きも忘れずに行いましょう。

まとめ:遺言書を発見したら冷静に手続きを進めることが重要

遺言書を見つけた場合、感情的に混乱することもあるかもしれませんが、適切な手続きを進めることが非常に重要です。特に自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、必ず家庭裁判所での検認手続きを経てから遺産分割を行うようにしましょう。また、遺言書の内容が不明瞭な場合や、相続人間での合意が得られない場合には、専門家の助けを借りて遺産分割協議を進めることが重要です。 最後に、相続手続きには期限があります。遺言書の発見後は早めに行動し、スムーズな相続手続きを進めましょう。不明な点がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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