「海洋散骨と自然葬：代わる選択肢」

海洋散骨は、故人の遺骨を海に散布することによって、最後のお別れを行う方法の一つです。 この方法は、自然への回帰や、海に対する特別な思い入れを持つ人々にとって、魅力的な選択肢と なっています。 しかし、文化や宗教、個人の価値観によっては、異なる見解が存在することも事実です。 本コラムでは、海洋散骨の意義、手続き、そしてそれにまつわる様々な側面を探求し、その理解を 深めていきます。

海洋散骨の意義

海洋散骨は、生前の故人が海を愛していたり、自然との一体感を重んじたりした場合に、その意志を 尊重する方法として選ばれることが多いです。海洋散骨を通じて、故人は文字通り自然に還ることが でき、遺族にとっても、悲しみを癒やし、心の平和を得る手段となることがあります。 最近ではお墓の管理が難しくなったことから散骨を選択する人も増えているようです。核家族化や 少子化が進んでお墓を承継する人が少なくなってきていることも影響しています。

海洋散骨の手続き

日本では海洋散骨に関する法律はありません。そのため海洋散骨を取り扱う部署もないことから、 許可や申請は不要となります。通常はお墓に預けた遺骨を別のお墓に移動する際は、改葬許可証を 役所に発行してもらう必要があります。 しかし散骨の場合は「移転先がない」という扱いになるため、改葬許可証も不要です。 ただし墓地管理者が「遺骨の引き渡しの際は、改葬許可証を提出してほしい」と依頼されるケースも あります。そういった場合は自治体に相談して、改葬許可証を発行してもらえるかを確認しましょう。 一般的には、専門の業者を通じて進めることが多く、また、散骨に際しては、環境に配慮した方法で行うことが求められ、生分解性のある骨壺を使用するなどの配慮がなされることもあります。

海洋散骨の倫理と文化

法的な縛りがなくともグレーなのではないかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。 刑法190条（遺骨遺棄罪）との関係について触れてみます。 ◎遺骨遺棄罪 「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、３年以下の懲役に 処する。」 海洋散骨は、この刑法で定める遺骨遺棄にあたるかといえば、答えはあたらないと考えられています。理由は、刑法190条の保護法益は死者に対する社会的習俗としての宗教的感情とされているからです。 そこから、遺骨遺棄罪における「遺棄」とは「社会通念上埋葬と認められない態様で放棄すること」と理解されています。すなわち、「社会通念上埋葬と認められる態様」であれば、遺骨を撒いたとしても直ちに遺骨遺棄罪にはならないのです。 この点については、平成２年に法務省刑事局が「刑法第190条の規定は社会的習俗としての宗教的感情 などを保護するのが目的だから、葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題ない」という見解を述べたとされています。 この見解が公式見解であるか非公式見解であるかは様々な意見がありますが、いずれにしても「節度をもって」散骨をしている限り、いきなりそれが刑事罰の対象となるという事態は考えづらいと言えます。 東京都のHPでも禁止はしていないと回答があります。

散骨については法律で許可されていないから実施してはいけないかというと全くそんなことはなく、 一定のマナーを守れば自由なものと考えられます。

海洋散骨のマナーと注意点

法律で禁止されていないからといって、自由に考えすぎるとトラブルに発展します。自治体によっては条例やガイドラインを設けているところもありますので、必ず事前に確認しましょう。 よく考えられる注意点についてまとめてみたいと思います。

・水産物への被害

遺骨はパウダー状にして海に撒きましょう。そのままでは海岸に辿り着いて人目に触れた場合に事件化する可能性があります。また他に一緒に流したいものがあるとしても、お花など自然に還るものである必要があります。貴金属やプラスチックは海へまかないようにしましょう。

・近隣への配慮

業者を手配している場合は問題ないエリアまで案内をしてもらえると思いますが、絵画や浜辺など 陸から近い場所での散骨はやめましょう。 海水浴場や観光地、漁業関係への風評被害が広がる懸念もあり、また、民事訴訟を起こされるリスクもあります。

まとめ

海洋散骨は、法律的には問題ないとされていますが、必ずマナーを守る必要があります。 供養をしっかりする、故人とのお別れを良いものにするためにも、専門の業者としっかり打ち合わせをし、マナーを守って海洋散骨を行いましょう。