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相続と生前贈与:贈与の効果とリスク

2024.6.14

  • 相続
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相続と生前贈与:贈与の効果とリスク(令和6年税制改正大綱も反映)

他者に財産を引き継ぐ方法は、大きく分けて「相続」と「贈与」があります。 終活や何らかのきっかけで相続を考える際は、「生前贈与」も有効な手段となりますので、 ぜひ考えておきましょう。 ここでは生前贈与の効果や注意点について触れていきたいと思います。

alt="親子が生前贈与について悩んでいる"

「生前贈与」とは

生前贈与とは、生きている間に自分の財産を他者へ贈与することを指します。 贈与をした時から、その財産は相手のものとなります。 なぜ生前贈与を行うかというと、相続時の財産を予め減らしておくことにより、全てを相続で引き継ぐよりも贈与税と相続税の合計額が小さくなる可能性があるからです。

生前贈与のメリット

資産の有効活用

生前に財産を譲渡することで、受贈者がその資産を有効に活用し始めることができます。 例えば、不動産を子どもに贈与すれば、子どもはそれを自己の住宅や事業資金として利用できるようになります。

相続争いの回避

財産を生前に分配することで、相続が発生した際の遺産分割に伴う争いを未然に防ぐことができます。また、自分が望む相手に財産を確実に引き継いでいくことが可能です。

評価額が上昇することへの対策

相続税もそうですが、税額の計算にはその時の評価額を用いて計算が行われます。 よって贈与税についても贈与時の価額に基づいて課税されるため、有価証券など将来的に価値が上昇 する可能性があるものを値上がり前に贈与すれば、支払うべき相続税が増えるのを防ぐことができます。一方で、値下がりした場合は結果的により多くの贈与税を支払うことになるため注意が必要です。

生前贈与の分類

生前贈与は大きく分けると「相続時精算課税制度」と「暦年贈与」の2つがあります。

・相続時精算課税制度 原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子どもや孫へ贈与する際に選択できる制度 贈与を受けた時点では一定額まで贈与税がかからないものの、贈与を受けた額が相続時に相続財産へ 加算し相続税を算出する 2024年1月1日以降、年間110万円の基礎控除を適用 税務署へ申告が必要 ・暦年課税(暦年贈与) 1月1日~12月31日の1年間で一人につき110万円までの贈与は非課税になる 110万円までの贈与であれば、税務署へ申告が不要 相続時精算課税制度を利用する場合は、贈与を受ける側(受贈者)が税務署へ申告をします。また、 一度、相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年課税に戻すことはできません。

まず「暦年贈与」について解説を進めていきます。

相続税の軽減を考える基準

改めてですが、相続税の軽減効果を考える場合、対象となるのは相続の対象となる財産が相続税の基礎控除額(2024年4月時点で3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える見込みのある人となります。 例えば法定相続人が配偶者と子ども1人計2名の場合、基礎控除額は4,200万円です。

贈与税の基礎控除

年間110万円までであれば基礎控除を受けることが可能です。控除枠を超えた範囲については贈与税の 課税対象となります。 例)200万円の贈与を行う場合、200-110=90万円に対して区分に応じた税率が適用されます。

生前に暦年贈与をする場合注意点

贈与から7年以内の分は相続税と見なされる?

死亡日以前3年間に贈与された財産は相続税の対象というルールがありましたが、2023年度の税制改正で対象期間が7年となりました。2024年1月以降の贈与から適用が始まりましたので、注意しましょう。 ただし、この場合でも相続財産として持ち戻す価格は、贈与時の評価額となりますので、不動産など 評価額の上昇した場合でも影響は受けません。 すでに支払った贈与税と、相続税を通算して精算となります。 実際に影響を受けるのは2027年1月以降に相続が発生する場合のケースですが、今後相続時精算課税制度を用いるべきかなど、専門家に確認するようにしてください。

贈与税の基礎控除は受け取る側の枠

110万円の基礎控除を使えるのは、贈与した側ではなく、受け取った側(受贈者)です。 両親からそれぞれ110万円の贈与を行った場合、基礎控除を受けられるのは110万円までですので、 残りの110万円については贈与税の課税対象となり、支払いの義務が生じます。

定期贈与と見なされる

定期贈与とは、例えば「1,000万円を10回に分けて贈与する」といったように、事前に贈与額が 決まっていて、一定期間で一定の財産を贈与することです。 この場合、贈与の合計額に対して課税が行われてしまうため、贈与の度に贈与契約書を 作成しておくか、保険商品など何らかの手法を取るようにしましょう。

名義預金もNG

名義預金とは、他人名義の預金で、実際に通帳を管理しているのはその名義人ではない預金を 指します。よくあるのは子や孫の預金口座を作り、実際には通帳や印鑑などは子や孫本人の 管理ではないというパターンです。 こちらに定期的に入金をしている場合、実際には子や孫にあげていることにならないとして、 贈与と見なされない可能性が高いです。 定期贈与と同様に贈与契約書を残しておくなどの対策をしておきましょう。

結局どちらを選択すべきなのか

2024年1月の改正によって、相続時精算課税制度にもメリットが生まれ、より選択の余地が生まれたと 考えます。それぞれのメリットを知った上で、必ず相続や贈与に詳しい税理士へ相談などした上で 選択を進めましょう。

暦年課税制度のメリット

・相続開始7年超の贈与については相続財産から切り離して考えられる ・相続または遺贈により財産を取得した者以外の贈与は加算対象外

相続時精算課税制度のメリット

・相続開始7年以内の贈与でも、基礎控除(年間110万円)までは相続財産から切り離せる ・相続時の課税価格に加算する贈与財産の価額を、贈与時の価額に固定できる。

どちらも贈与財産の価額や、相続発生のタイミングによって試算するのが望ましいです。

まとめ

以上のように、贈与にはそれぞれのメリットとデメリットが存在します。 贈与を受ける場合は、これらの要素を考慮し、慎重に行動することが重要です。 また、贈与を行う場合も、贈与を受ける人の立場や意向を考慮し、適切な条件を設定することが 重要です。 最後に、贈与や相続に関する手続きは複雑なものであり、税理士の助言を受けることを お勧めしています。その分野に明るい専門家に相談し、適切な手続きを行うことで効果的に 贈与を行うことができるでしょう。

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